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私の足にぶつかった物体は、弾みで私から離れていく。
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なんで離れていくの…と、その物体を掴んでみたら
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「キミ、すごい飲み方するんだね」
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これ、テニスボールだ。
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そう気づいた時には、目の前に知らない男の人が立っていた。
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「アナタ、だれ…？」
「んーと、通りすがりだね」
「…このテニスボールの、持ち主ですか？」
「そ。酔っ払いのキミから取り返しに来た」
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なんだか声に芯が通っていて、少し高めの声。
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手に持っているボールを返さなきゃ、と
ふらつく足をなんとか奮い立たせて、その人に近づく。そうすると…
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「王子様……だ」
「はい？」
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私がそう言ってしまうのも問題ない。
だって、とんでもないイケメンが目の前に立っている。
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髪は茶髪で、毛先は少し遊ばせている。黒のジャケットに白のロゴTシャツ、下はダボッとしたジーンズ。とんでもなく似合っている。
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首についているネックレスも、身につけているアクセサリーも、この人が付けている事で、なんだか価値が上がりそう。
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………待てよ、なんだこれ。
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胸のドキドキが止まらない。
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瑠姫「あのさ…」
「は、はい」
瑠姫「それ、返してもらってい？」
「…へ？」
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それ。と指さした先にあったのはテニスボール。
ハッと我に返った私は、慌てて「ごめんなさい…！」とボールを返す。指まで綺麗だなんて、罪だ。
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作者名：カスミ | 作成日時：2022年6月8日 23時
