13 ページ13
.
景瑚の肩に添えようと思っていた手が、動きを止めた。
.
.
「…え?」
景瑚「なーに」
「…え、いや…」
景瑚「…っていうか、早くカフェオレ。」
「あ…うん…」
景瑚「何突っ立ってるの」
「わ、分かってるよ…行ってくる…」
.
戸惑う様子も見せない景瑚の隣で、無駄に戸惑う私はカバンをデスクに置いて、財布だけを取り出して
小走りでオフィスを出た。
.
えっと…自販機自販機…、と探しながらもオフィスから少し離れた所の壁にもたれかかって
上がっていた呼吸を整えるように深呼吸をする。
心臓に手を触れさせると、どくんどくんとリズムが乱れているのが分かった。
.
「……っ、」
.
景瑚『俺は…好きな子以外と一緒に帰りたいなんて思わない』
.
つい、数時間前の。何気ない言葉。
景瑚の言葉と、今の景瑚の言葉。
.
頭の中が混乱する。好きな子以外と帰りたいと思わないって…、それは、親友の私にも当てはまるもの?
っていうか、私景瑚と一緒に帰ったことくらい何回もあるよね…
.
「…」
.
いや、おかしいよ、うん、私がおかしい。
だって景瑚は私のそばにずっと居たし、今となっては腐れ縁みたいな仲だし。前話してた景瑚のタイプに私なんかまるで当てはまらないし。
.
私ったらなに考えちゃってんだろ、と体制を戻して自販機に向かう。
えっと〜、カフェオレ…カフェオレ…っと…
.
.
景瑚「遅い」
「うっ、わぁっ、!」
.
気付けば、私が押そうとしたボタンの上にある景瑚の人差し指。
景瑚が私を覆うように立っていて、景瑚の右手は自販機に添えられて…
.
え、なんか。なんか、まるで、これ。
.
.
…壁ドン、みたい、じゃない?
.
299人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:カスミ | 作成日時:2022年6月8日 23時