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カチ、とマウスを押す音がする。
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景瑚｢俺は…好きな子以外と一緒に帰りたいなんて思わない」
｢…そんなもの、かな」
景瑚｢普通そうじゃないの？」
｢…そう、なんだ…」
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景瑚は画面とにらめっこしながら淡々と口にする。
こいつの恋愛観を信じるのはどうかと思ったけど
今回ばかりは信じることにした。だって。
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もしそうだったら。凄く嬉しい。
会ったばっかりだし、まだお互いのことも全然知らないけど。
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一緒に帰ろう、と一言誘ってくれたということは、私に少しでも好意を持ってくれているのかと、想像してしまう。それだけで心が跳ねる。
そしてもし。もし、これから仲良くなって付き合うなんてことになったら。
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景瑚｢まあー？俺の場合は女に家知られた時点で彼氏に振られただの親と喧嘩しただの、何かしら理由つけて乗り込んでこられるのが面倒だからってだけの理由だけど」
｢…あぁ、そうですか。はいはい」
景瑚｢うっわ、お前またコイツモテアピールしてきたようざ〜って思ったでしょ」
｢自分で分かってるんだったらやめなよ」
景瑚｢モテちゃうんだから仕方ないでしょ！」
｢…うっるさいなあ、そんなの知ってるって！」
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ガミガミと続く言い合いは、背後からの部長の｢はい、仕事仕事｣という声で一旦中止。
腹立つわ〜、と景瑚の方を思いっきり睨んで再びキーボードに手をかける。
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｢………」
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もし、もし。あの誘いが私への好意によって起こった言動だったら。
もし、あの時優しそうに笑った白岩さんの好きな人が私だったら。
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景瑚｢…だから、A顔キモいって」
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私は今度こそ、シンデレラになれるかもしれない、と。
本気でそう思っていた。
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作者名：カスミ | 作成日時：2022年6月8日 23時
