えぴそーど7 ページ7
「ゴフッ、ゴフッ」
地面に倒れ臥せ、体を痙攣させながら大量の血を吐き出すシャム。先程までの元気な姿は眩ませている。
「シャムさん!?『
必死に治癒魔法を重ね掛けするも、いずれも効果は薄いようだ。シャーレは魔力の使いすぎにより、目眩を起こして倒れそうになる感覚を覚える。
そうこうしている間にも、シャムは原因不明の吐血を繰り返している。
彼の生命の灯火は目に見えて減っていることは確か。だが、シャーレにはどうすることも出来ない。
「......『
最後の力を振り絞り、シャムに治癒を施す。その甲斐あってか少しだけ彼の表情が和らいだ気がした。
膝からガクリ、と崩れる感覚。彼女は遠のく意識の淵で、誰かに担がれ運ばれる感覚と暖かな温もりを感じた気がした。
▼▲
「まったく、世話、掛けさせて、くれて、本当、に、君は」
一歩歩く度に胸の傷が開き、ポタポタと布を伝って赤い生命が零れ落ちる。
アストはシャムが倒れた拍子に地面に打ち付けられ、今しがた意識を取り戻した。するとどうだろう、自分の可愛い許嫁が倒れており、自分達を救った少年もまた血を吐いて地面に臥せているではないか。
現在のアストは、シャーレをお姫様抱っこし、シャムを背中に背負っている状況だ。
このような奇異な光景を遠巻きに眺めている野次馬は大勢いるが、助けに来てくれるような人間は誰一人としていなかった。
(というか、この少年は誰なんだよ......)
助けてもらった恩があるため、下手に無下に扱えないアストだ。こういった妙に義理堅いところが彼の嫌われる所以なのだが...彼は気付かない。
一貴族として、周りの助けは求められない。何より面子を気にする貴族だからこその不自由さが、今回は裏目に出てしまった。
因みに、先ほどシャーレが助けを求めなかった理由がこれである。
貴族街には馬車が通っていないため、結局人間二人を担いで屋敷に帰宅したアスト。
「お帰りな──お坊っちゃま!?どうされましたか!!」
「ゴメン、後は任せた──」
そう言い残し、遂にアストまで倒れてしまう。
シャーレを無事メイドに手渡し出来たアストの顔は、どことなくやり遂げた表情だったという。
───
貴族街に馬車が通っていない理由は、馬の糞が街並みを汚す、という意見が大量にあったからとかなんとか。
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