えぴそーど６ ページ6
そういえば、と、シャーレは先程目に写った光景にそこはかとない違和感を覚えた。
だが、その違和感は形になる前に霧散し、余計なことを考える労力より足を進めることに集中したため思考はそこで打ちきりとなる。
姿の見えない冒険者の方々や執事のラルド、きっと彼らは死んでしまったのだろうと、シャーレは一人涙を浮かべるのだった。
何かを忘れている。その違和感正体に辿り着けないまま。
▼▲
無事門の検問を通り抜け、市民街の馬車を捕まえて貴族街まで送ってもらった。
「135ゴールドだ。それにしても、やっぱり貴族街はきらびやかだねぇ」
「いち、に、さん......はい、どうぞ」
「毎度あり。またのお越しをー」
パカラ、パカラ、と軽快な音を立てて遠ざかる馬車をのんびりと見送ったのち、まずはアストを自宅へ届ける。
ボロボロの三人の姿を見ても大した反応をしなかった辺り、きっとよくあることなのだろう。
「シャムさんシャムさん。シャムさんはどこかの貴族なのですか？」
「平民も平民だ。で、食いぶちに困って冒険者をやっている」
聞くと、どうやら女で一つで育てられ、これ以上迷惑はかけられないと就職したのだとか。自分の親を話すときのシャムの目はいつもより優しく、どこか誇らしそうだった。
貴族街は、素朴な田舎を連想させる市民街とうって変わって賑わいを見せている。理由は単純明快、市民街より貴族街のほうが品揃えがいいため、冷やかし目的の市民が多いからだ。
「因みに、シャムさんのお家はどこなんです？」
「...ここから随分遠いからシャーレ様がご存じかは分からないが、『龍の里』って言えば分かるか？」
「りゅうの、さと？......え、あの噂って本当だったんですか！？」
「まぁ、な。俺もガキの頃はよく龍神様に稽古をつけてもらっていた」
龍の里、古来より息ながらえし最上位主『龍神』によって治められているとされる村。このフィリアス王国より更に東にあるターガ公国の領土に存在する。
多くの者が龍神の姿を一目見ようと龍の里を訪れようとしたが、ついぞ村さえも発見できずに今を迎えている。
シャーレも勿論その噂を知っている。だが、シャムの目が嘘をついているようにも見えず、そしてシャーレ自信もシャムが嘘をつく人間とは思いたくないため信じるしかなかった。
「だからあんなにお強いのですね！」
「いや、あれは奴の注意がアスト様に向かっていたからこそ」
そこまで言ったとき。彼の体が突然跳ねた。
「──え？」
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