えぴそーど2 ページ2
「......へへ、へへへ。なんだ、ハズレかと思ったら上玉がいるじゃねぇか」
奥で震える彼女を見て、猿のような感想を溢す男。そして更にその後ろには二人の盗賊と思わしき人影。
紅く血に濡れた刀身は、直前まで人を切っていたことをなによりも分かりやすく証明していた。
───恐怖で、体がすくむ。
「あ"?ンだよこのガキ。退け、邪魔だ。今なら半殺しで勘弁してやるヨ」
無精髭を携えた男が下品な笑みで汚ならしい口許を三日月に歪める。
もう一人の背の小さい男はニヤニヤと意地の悪そうな笑みを浮かべ、シャーレに舐めるような不快な視線をよこす。
「ヒ、ヒヒッ。雌餓鬼のカラダを貪るのは久しぶりなんだな。壊れるまで相手してもらうから覚悟しとくんだな...ヒヒッ」
自分の最愛の許嫁で下衆な妄想をされる。僕の中のちっぽけな独占欲が、まるで水を得た魚のように燃え上がる。
「舐めるなッ!これでも僕はヴィンザース家の次期党首!!貴様らのような三下なんぞ赤子の手を捻るようなものだ!!」
「──へぇ、そうかい。半殺しで許してやろうと思ったが予定変更だ。その綺麗なツラが原形留めなくなるまでボコボコに殺してやるヨ」
売り言葉に買い言葉。余裕の表情をしている無精髭の男を睨み付け、腰に下げていた剣に手を伸ばす。
柄を握り、金属質な手触りが今はどうしてか心もとない。剣の修練を蔑ろにしていた訳ではないが、魔法の方に熱が入っていたのは否めない。
背後には大切な人が。負けられない...負けたら僕も彼女も死ぬ。まさに一蓮托生という訳だ。
「......オラァッ!!」
覇気の篭った掛け声と共に飛んでくるは鉄製の剣。馬車という狭い空間ではあるもののそのスピードは十分に早く、気を抜いたら一撃で意識を刈り取られることだろう。
右肩に向けて繰り出された袈裟斬りを、寸でのところで左足を軸に半回転してかわす。そのままの勢いで相手の袈裟斬りによって伸ばされた左腕に縦一文字。
───ボトリ。
「イッテェェェェエエエ!!!うで、腕、ウデガァァアァァァァァァ!!!」
鮮血したたる肘から先のない腕を抱えた男を馬車の入り口まで蹴り飛ばす──とまではいかないものの、後ろで突っ立ってる小柄な男にぶつけ、怯ませる。
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