『殺人≠殺戮』side:勇者 ページ40
「皆落ち着けッ!!」
見えない声の主の膨大な殺気が身を焦がす中、静寂を裂く声を聞く。
燃え上がるような深紅の髪を後ろで束ね、整った眉、形のいい唇、筋骨隆々とまではいかないものの、ほどよく筋肉のついた体。
まさに理想の好青年の具現化みたいな人物。
「僕達は栄えあるフィリアス王国の未来を担う剣だ!幸いにして数はこちらが有利!アズリア卿を潰されたのは痛いが...それだけだ!!」
演説するかのように、彼は俺達に語りかける。
「青臭いねぇ...いやぁ、僕も昔を思い出しちゃったよ」
「見よ!奴は余裕綽々の様子!傲慢にもそうやって驕り昂っていられるのも今のうちだ!」
周囲にはざわめきが戻る。
──刹那ほどの時間だったろうか。バシュン、とあのときと同じように空を切る音がした。
「ガハッ!?」
後ろから声がした。きっと、誰か犠牲になったのだろう。
「まっ、なんでもいいけどねぇ...僕の任務は勇者の回収だし。...あ、いや。回収と、惨殺だっけ?」
相手はそれだけ言うと、今の数倍デカイ殺気をぶつけてくる。
──本物の殺気は質量を持つ、とは本当だったようだ。膝はガクガク震え、腰は既に落ち、胸には締め付けられるような痛みがあった。
─────締め付けられる、痛み?
待て、この切なさは何だ?俺はアイツとは初対面のハズだ。逆説的に、相手に持つ感情なんて憎しみが関の山で...
「き、気後れするな!我らは勇猛果敢なフィリアス王国貴族!ノブレスオブリージュを果たすときだ!」
こうして、あるものは胸を。あるものは頭を。あるものは首を。直径凡そ五ミリの風穴が開けられた。
血が滝のように流れる者もあれば、ドロリとした脳漿を噴水のように撒き散らし床を汚す者もいた。
千差万別、分け隔てなく、皆平等に殺した。
摘み取った命を踏みにじるように、新たな命を貫くその姿。決して見えないのに、見えるはずがないのに。そこに俺は──死神の後ろ姿を見た。
中には逃げたものもいるだろう。
だが、この状況で尚応援にこない事からして他のクラスも同様の被害を受けているとみて間違いない。
「─────」
ああ、あまりにも、無力。さっきまで話していた子達が物言わぬ肉魂へと姿を変える様をみて尚、足が動かない。
まるで、両足が泥沼に浸かっているような感覚。
死の匂いが充満し、見事な血の花が床に咲いている。それはとても鮮やかで──
どこまでも救いがなかった。
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haru(プロフ) - 面白いです! (2021年6月30日 9時) (レス) id: 6cf492dda0 (このIDを非表示/違反報告)
悠佳(プロフ) - Noraさん» 褒めていただき光栄です!いつも女の子しか描いていないので、うまく描けるかわからなかったのです〜(汗) (2018年11月22日 19時) (レス) id: 378e9b06a8 (このIDを非表示/違反報告)
Nora(プロフ) - 悠佳さん» 拝見させて頂きました。とても綺麗で、思わずみとれてしまう絵でした!本当にありがとうございます。これからも頑張ってください、応援しています。 (2018年11月22日 19時) (レス) id: e36332a8d8 (このIDを非表示/違反報告)
悠佳(プロフ) - こんにちは!イメ画出来たのですが、いかがでしょう? (2018年11月22日 18時) (レス) id: 378e9b06a8 (このIDを非表示/違反報告)
Nora(プロフ) - ゆうりん@アニメ厨さん» レスが遅くなり申し訳ありません。(忘れてたなんて言えない...)作品の方、読ませて頂きました。適格なアドバイス、ありがとうございます。これから、いっそう邁進いたしますので、応援のほどをよろしくお願いします。 (2018年8月21日 12時) (レス) id: e36332a8d8 (このIDを非表示/違反報告)
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