『誰が為の』side:勇者 ページ37
──夢を、見た。
とても愚かで、救いようのない少年の夢を。
穏やかな生活が突然一変し、地獄を見ることになった少年の夢を。
断片的な記憶の波が押し寄せる。
それは、綺麗な金髪だった。
それは、優しい碧眼だった。
それは、端正な顔立ちだった。
それは、それは、それは、それは......
それは、血にまみれた金髪だった。
それは、血に濡れた瞳だった。
それは......それは、その顔は、笑っていた。
残酷に、冷酷に、嗤っていた。
「──ぁ」
意識が覚醒する。
寝ぼけ眼は何故か視界が歪んでおり、天井がまともに見えない。
「......なんだよ、なんなんだよ、これ」
目を擦ると、袖が濡れていた。
彼は泣いていた。
頬を伝う涙は留まることを知らず、次々と流れ落ちる。
「これは...この記憶は、誰のものなんだよ......」
誰に聞かれるでもなく一人ごちる。
その呟きは空気に同化するように溶け、誰にも届きはしない。
ジクリ、と手術痕が痛んだ気がした。
▲▼
「おやぁ?勇者様、どうなさったのですか?今に死にそうな顔をしてますが」
「──お姫様、か」
朝食の紅茶を飲みながら気持ちを落ち着かせる。もっとも、お姫様が来た時点でその目論見は失敗に終わるだろう。
「...いや、なんだ。少し怖い夢を見てね」
「悪夢ですか。勇者様もタイヘンですね。今晩は隣で寝てあげましょうか?」
「............」
バレバレの誘い文句を冷ややかな視線で返答し、再び思考の海に潜る。
あの金髪碧眼はおそらく......
「勇者様、そんなにのんびりしていると学園に遅刻しますよ」
「ん、悪い。そろそろ行くかー...って、あれ。メイドさんは?」
「さぁ?今日は紅茶淹れからなにまで私が行いました」
そう言うと、自分で淹れた紅茶を啜るお姫様。
なんとも絵になる風景で、俺みたいな庶民とは違うと嫌でも認識させられた。
「紅茶、淹れられるのか」
「ええ、淑女の嗜みてしてよ?」
薄い胸を張るお姫様は、どこか誇らしそうだった。
▲▼
「ねぇねぇ聞いてよ勇者様!」
「ちょ、ずるいわよ!私が先なの!」
「ゆ、勇者様...私とおしゃべりしませんか?」
登校し、自分の席で落ち着けたかと思ったら女子に囲まれた。
これはどういうことかと周りを見渡すも、女子が肉壁となって全然見えない。
いい匂いが四方八方からする。
もれなく全員アイドル顔負けの美少女と来るものだから、困惑もまた
いったい、どういう心境の変化だろうか。
『違う』side:勇者→←『 』 ※予告です。本編では当分先になる気がします。
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haru(プロフ) - 面白いです! (2021年6月30日 9時) (レス) id: 6cf492dda0 (このIDを非表示/違反報告)
悠佳(プロフ) - Noraさん» 褒めていただき光栄です!いつも女の子しか描いていないので、うまく描けるかわからなかったのです〜(汗) (2018年11月22日 19時) (レス) id: 378e9b06a8 (このIDを非表示/違反報告)
Nora(プロフ) - 悠佳さん» 拝見させて頂きました。とても綺麗で、思わずみとれてしまう絵でした!本当にありがとうございます。これからも頑張ってください、応援しています。 (2018年11月22日 19時) (レス) id: e36332a8d8 (このIDを非表示/違反報告)
悠佳(プロフ) - こんにちは!イメ画出来たのですが、いかがでしょう? (2018年11月22日 18時) (レス) id: 378e9b06a8 (このIDを非表示/違反報告)
Nora(プロフ) - ゆうりん@アニメ厨さん» レスが遅くなり申し訳ありません。(忘れてたなんて言えない...)作品の方、読ませて頂きました。適格なアドバイス、ありがとうございます。これから、いっそう邁進いたしますので、応援のほどをよろしくお願いします。 (2018年8月21日 12時) (レス) id: e36332a8d8 (このIDを非表示/違反報告)
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