『獣欲』side:勇者 ページ21
「明日から学園に行くのでは?そろそろ寝た方がいい、と私は進言しますよ」
「──、ああ。そうだな。もう寝るか」
結局、この日は魔法が使えずに終わることになった。
どうやら思いの外熱中していたようで、辺りは暗闇に包まれている。
中庭を出て、王宮の自室に戻る。
ザッザッ、とスニーカー特有の音が、今は心地が良かった。
ザッザッザッザッ
コツコツコツコツ
ザッザッザッザッ
コツコツコツコツ
ザッザッザッザッザッザッザッザッザッ
コツコツコツコツコツコツコツコツコツ
「...おい、どうして着いてくる」
思わず歩みをとめ、コツコツの元凶に訪ねる。
取り敢えずお前は、その無駄に高いヒールを脱ぐところから始めろ。
「だって、お父様が“勇者専用の、獣欲の捌け口になれ”と仰ったのですもん」
彼女は、顔に一切の曇りを浮かべることなく言い切って見せた。
むしろどこか誇らしそうだ。
「笑えない冗談は嫌いだ」
「あら、奇遇ですね。私もです」
...この女。
「武力行使に出るぞ?」
勿論、脅しだ。
女子供には手を出さない主義なんだよ、俺は。
しかし、どうしてだろうか。
お姫様は臆面にも出さずに、正面切って俺を挑発してくる。
「やれるものなら、どうぞご自由に」
と。
もう嫌だこの女。
俺は、はぁ、と溜め息をつくと歩みを進める。これ以上話しても埒が明かない。
後ろで、安堵の溜め息が聞こえた。
お姫様も怖くない訳ではなかったらしい。馬鹿だな、俺は魔法が使えないからどうとでもなるというのに。
「......」
「ん、どうした。来ないのか?」
「いえ──なんでも、ありません。今行きます」
▼▲
次の日。
朝早くメイドさんに起こされた俺は、自室で優雅な朝食を摂っていた。
紅茶だけ。
それがこの国の朝食らしい。
──いや、そもそも朝食ではないか。
この国は...というか貴族は、昼と夜の二食生らしい。
肉体労働を強いられることのない、貴族らしい食生活と言える。
貴族どころか、王族だが。
朝食を食べないことが、一種のステータスにも繋がってるとかなんとか。
当然、健康な日本人男児には辛い。
日本での食事を思い出し、帰りたいという気持ちが急速に沸き上がってきた。
が、やるべきことがある、と無理矢理自分を納得させ、本日の昼食に思いを馳せるのだった。
───
勇者sideが長いですが、彼も一応主役です。
言い忘れていた気がしてきました。
この物語は、夢主と勇者を中心に話を進めていきます。
3人がお気に入り
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haru(プロフ) - 面白いです! (2021年6月30日 9時) (レス) id: 6cf492dda0 (このIDを非表示/違反報告)
悠佳(プロフ) - Noraさん» 褒めていただき光栄です!いつも女の子しか描いていないので、うまく描けるかわからなかったのです〜(汗) (2018年11月22日 19時) (レス) id: 378e9b06a8 (このIDを非表示/違反報告)
Nora(プロフ) - 悠佳さん» 拝見させて頂きました。とても綺麗で、思わずみとれてしまう絵でした!本当にありがとうございます。これからも頑張ってください、応援しています。 (2018年11月22日 19時) (レス) id: e36332a8d8 (このIDを非表示/違反報告)
悠佳(プロフ) - こんにちは!イメ画出来たのですが、いかがでしょう? (2018年11月22日 18時) (レス) id: 378e9b06a8 (このIDを非表示/違反報告)
Nora(プロフ) - ゆうりん@アニメ厨さん» レスが遅くなり申し訳ありません。(忘れてたなんて言えない...)作品の方、読ませて頂きました。適格なアドバイス、ありがとうございます。これから、いっそう邁進いたしますので、応援のほどをよろしくお願いします。 (2018年8月21日 12時) (レス) id: e36332a8d8 (このIDを非表示/違反報告)
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