『子供』side:勇者 ページ19
時は夕暮れ。
茜色に輝く太陽が、静かに俺を見下す。
反対側には、まだ、仄かに薄い月が浮かんでいる。
「...世界が変わろうと、変わらない物も、あるんだな。この世界で変わらないのは...人の醜さと、お前らくらいだぜ」
やはり一人でいる時間が、一番落ち着く。
「──あら、そんなポエムみたいなこと言っちゃって。恥ずかしくはないのかしら?」
不意に、後ろから声がした。
子供特有の、高く、澄んでいる声。
「君は...いや、僕のベッドで寝ていた娘じゃあないかな?なにかご用で?」
さっきは体ばかり...ゲフン。
さっきは際どいポージングがあまりにもインパクトが強かったから、あまり注目していなかったが...この娘、赤髪だ。
髪色、そして王宮に入ることが出来る身分。
数少ないヒントを照らし合わせると自ずと答えは見えてくる。
「君は、国王の娘さんかな?」
目の前の少女は、まるで動じない。
ということは、つまりそういうことで...
「ええ、如何にも。
そこで一回彼女は言葉を切る。
俺の出方を見ているようだ。
しばらくすると、その人形のように整った顔を美しく歪ませた。
「アリシア・フィリアス・ロードでございます。以後、お見知りおきを」
まるで玉葱の薄皮のように軽そうなカーディガンの裾を手で摘まみ、優雅に礼をしてみせる。
正直に言おう。
俺はこのとき、目の前の少女に見とれていた。
まだ年端もいかない少女に、だ。
それほどに彼女は優雅で美しかったのだ。
緊張により高鳴る胸の鼓動を悟られないよう、慎重に言葉を紡ぐ。
「それで、何か用事でもあったのか?」
思いっきりタメ口だった。
ただ、今気付いたところで後の祭りだ。
「大丈夫ですか、勇者さま?さっそく、メッキが剥がれそうですけど?」
クスクス、と妖艶に笑う赤髪の少女を見て内心で毒づく。
しょうがねぇだろ!?
元の世界でも、お前みたいな美少女いなかったんだからよ!?
なにか反論してやろうと、男の子魂を奮おうと前を向く。──すると何故か、前方の少女まで赤面して俺のことを見ていた。
「な、な、な...」
ふるふる、と体を震わせ、俺を睨み付けてくる。
「お、おい。大丈夫か...?」
心配して近寄ろうとしたとき。
彼女が──壊れた。
「何てこと考えてるのよーッ!!」
突然ヒステリックに叫びだしたかと思うと、俺は右頬に真っ赤な手形を付けられていた。
解せぬ。
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haru(プロフ) - 面白いです! (2021年6月30日 9時) (レス) id: 6cf492dda0 (このIDを非表示/違反報告)
悠佳(プロフ) - Noraさん» 褒めていただき光栄です!いつも女の子しか描いていないので、うまく描けるかわからなかったのです〜(汗) (2018年11月22日 19時) (レス) id: 378e9b06a8 (このIDを非表示/違反報告)
Nora(プロフ) - 悠佳さん» 拝見させて頂きました。とても綺麗で、思わずみとれてしまう絵でした!本当にありがとうございます。これからも頑張ってください、応援しています。 (2018年11月22日 19時) (レス) id: e36332a8d8 (このIDを非表示/違反報告)
悠佳(プロフ) - こんにちは!イメ画出来たのですが、いかがでしょう? (2018年11月22日 18時) (レス) id: 378e9b06a8 (このIDを非表示/違反報告)
Nora(プロフ) - ゆうりん@アニメ厨さん» レスが遅くなり申し訳ありません。(忘れてたなんて言えない...)作品の方、読ませて頂きました。適格なアドバイス、ありがとうございます。これから、いっそう邁進いたしますので、応援のほどをよろしくお願いします。 (2018年8月21日 12時) (レス) id: e36332a8d8 (このIDを非表示/違反報告)
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