深い溝を ページ5
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ーーってな訳で、京への旅行に行く為、私はいつもの倍以上のスピードで書類仕事をこなしていた。
そんな所へ、現在進行形でサボり中らしい総悟が顔を覗かせてくる。
「……いつも以上にはりきってんな、てめェ」
「私はもう直ぐ隊務に大きな穴をあけますからね。これくらい当然ですよ?沖田隊長」
いつもいつもいつもいつも殆ど仕事をすることの無い総悟に嫌味ったらしく言ってみると。
「……そうかィ」
と、ひと言。
…少し、様子が変だ。
総悟らしく無いというか、なんと言うか。
前にプチ喧嘩をした時には何もないって、総悟は言ってたけど。
やっぱり私と総悟の間に、穏やかだけれど分厚い壁がある様に思えてならない。
「……」
「……」
知らぬ間に黙り込んでしまい、沈黙が落ちる。
壁に掛けられた時計の秒針が音を立てるのを、聞いているだけ。
ーーやがて、それを破ったのは、総悟の方で。
「……京へ、行くんだってな」
「…急に、どうしたの?」
次から次へ、唐突に放たれる静かな声音に、隊務中だと言う事も忘れて尋ねてしまう。
しかし、総悟は元々口調を気にする奴じゃないから、そのまま口を開く。
さっきから、今までずっと、目線が合わないのが、気になっていた。
「……経緯は、聞いた。本当に都合が悪ィなら、言いやがれ」
最初は戸惑いっぱなしの私だったけれど、だんだん分かってきた気がする。
…多分、総悟には本当に言いたいことが胸の内に合って、だけどそれは何かの理由でストレートにぶつけられなくて、だからこんなに回りくどく確信に触れずに尋ねてくる。
私は頭がキレないから、それでは伝わらなくて、前は喧嘩してしまった。
「それって…行きたくないなら、何とかするって事?」
「まァな。てめェが抜けたら、俺がサボれくなっちまう」
だから多分、これも本当に伝えたい事を隠す為のプラフだと思う。
今まで、私はそれに気が付かなかったから、いつの間にか総悟との間に溝ができてしまったんだ。
可笑しいと思った時に、ちゃんと話し合わないから。
長い付き合いだからこそ、こうなってしまったのだろうけど、いつまで経っても総悟だけに抱えさせるのなんて間違ってる。
…私も、成長しなくちゃ。
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頑張ってください - ああああああああ久々に読んだら進んでてまた神威熱が… (2020年1月6日 1時) (レス) id: ac6d87c707 (このIDを非表示/違反報告)
自己満者 - 京篇凄い良くて、泣いちゃいました(笑)更新頑張って下さい! (2019年8月17日 15時) (レス) id: c6b3012422 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - むくさん» コメントありがとうございます。時間をかけて丁寧に書いたシーンなのでそう言っていただけるととても光栄です!これからもよろしくお願い致します。 (2019年5月26日 23時) (レス) id: 765bdcb728 (このIDを非表示/違反報告)
むく(プロフ) - 求婚シーンめっちゃ好きです〜!! (2019年5月25日 23時) (レス) id: 3bb4d6b7d5 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - 匿名さん» 初めまして!そう言っていただけてとても嬉しいです。神威くんのイケメン台詞は割と心の声の方が潜んでいたりします笑これからもよろしくお願いします!コメントありがとうございました! (2019年4月29日 20時) (レス) id: d60993068d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時:2019年1月8日 17時