トイレに用無し ページ24
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神威
「オイ、待ちやがれ」
「……何、おまわりさん?」
トイレに行こうとしたら、茶髪のおまわりに呼び止められた。何処かで見た事ある顔だと思って暫く記憶を探っている内に、一つ思い当たる節があった。
…しかしそれは口には出さずに、目の前のおまわりに続けて問うた。
「何の用?アンタはトイレって訳じゃ無さそうだね」
「あァ。テメェが神威、かィ?あのAの旦那だっつーから、もっとゴリラみてェな野郎かと思ったが、ゴリラというより猪だな」
「あはは、おまわりさんこそ。俺、殺気には敏感なんだ。感じるよ、アンタの殺る気を」
このおまわりが何の意図があって俺に声を掛けてきたのかは知らないけど。
あの時、Aを助けた時の、戦場で。弱かった敵の微弱な殺気等では無い、本物のそれを、俺はずっと感じていた。それがこの男のものだと気が付いたのは、先程、病室での事だ。
「商人がおまわりに喧嘩売るのかィ?……まァ、本当に商いで食ってるのかは、知りゃしねェがな」
「俺はただの商人だよ。どうしてそう思うの?」
まるで“本当は商人でない”とわかっているような口振り。若しかしたら本当の俺を知っているのかもしれないが、簡単に明かすのは面白くない。
「目だよ。ありゃ、ただの商人の瞳なんかじゃねェ。数多の戦場を生き抜いてきたような、手練れの目でィ」
「……夜兎なんて、皆そんなものさ。戦場では、誰しもが獣になって暴れ回る。そういう生き物なんだよ」
おまわりは、そう言った俺を暫くの間無言で眺めていたけど。
「…テメェの嫁もか?」
「………そうだね」
ーーAも、ね。
先程のAとのやり取りを思い出しながら、ゆっくりと頷けば、おまわりはそんな俺を不思議そうに見返した。
「尋問はもういい?おまわりさん。俺、トイレに行きたいんだけど」
会話を切り上げ、おまわりに背を向けると。ガッ、とその肩を掴まれる。振り向くと、最早隠せていない殺気が、俺に刺さった。
おまわりの赤い瞳が爛々と光る。
「もう一つ。…真選組一番隊隊長、沖田総悟。この名をその頭に叩き込んどきな」
…オキタ、ソウゴ。聞き覚えのある名前。……あれは、確か。
「(……Aの資料に載ってた奴、か)」
上司として、記載されていた。今の今まで忘れていたけど。
「…成程ね。……分かった。頭の片隅にでも置いておくよ、おまわりさん」
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モンブラン - とても面白いです!これからも更新頑張ってください!応援しています。 (2018年12月27日 18時) (レス) id: e30eeb1aa9 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - limeさん» コメントありがとうございます。最高だなんてそう言って貰えてとても嬉しいです! (2018年12月20日 18時) (レス) id: 9c5936b685 (このIDを非表示/違反報告)
lime - 最高です…… (2018年12月19日 22時) (レス) id: d65845a82c (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - 雨さん» おそくなってしまい、申し訳ありません!なんとか生還して参りました(笑)これからもよろしくお願いします! (2018年12月8日 14時) (レス) id: 9c5936b685 (このIDを非表示/違反報告)
雨(プロフ) - テスト頑張って下さい!更新楽しみにしてます! (2018年12月4日 22時) (レス) id: e3333da4ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時:2018年10月7日 16時