ケッコンの日 ページ41
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「……か、神威……」
何よりもまず、驚きが先にやって来た。だって、今日は……
「帰ってこれないんじゃ、無かったんですか…」
「うん、その予定だったんだけど。思った以上に楽に片付いたんだ」
「楽過ぎてツマんなかったなぁ…」と本当に詰まらなさそうに零し、視線を宙に彷徨わせた。
それから何を思い返していたかは知らないが、私に視線を戻すと、「…それに、」と神威は続けた。
「今日が正式なケッコンの日だろ?」
「…意外です。そんな事、覚えちゃいないかと思っていました」
すると神威は「心外だなァ。いい加減傷付くよ、俺も」と全然傷付いてなさそうに口角を上げる。
「俺だって覚えるべき事は覚えるよ。どうでも良い事はまず聞いてないから」
「…私との結婚は、どうでもよくないって事ですか」
「案外そうかもね。だってAとでしょ?」
迷う事なく言い切った神威を見て、私は理解した。…と、言うより再認識した、と言うべきだろう。
「(…そうだ、コイツは…神威という男は…“強い私”と殺し合いがしたくて結婚したんだった)」
つまり、神威がその澄んだ瞳に写しているのは、決して“私”なんかじゃない。その奥にある、“強さ”だ。
だから女としての営みに及ぶ事は無いし、最低限の事はしてくれる。
それ自体は、多分初めから頭では分かっていたので、別にどうという事は無い。…寧ろ驚くべきは、それに対して“悲しい”と思っている自分がいる事だ。
私自身を“見て”欲しいと、そんな気持ちを抱いてしまっている事。
自分の中で、到底理解し得ない感情に苛まれていると、神威が口を開いた。
「…それより、バカってどういう事?」
「…え、そんな事言いました?」
咄嗟に私はトボけた。よくよく考えてみたら、神威は多分というか絶対さっきの叫びを聞いていた。
思いっきり素だったし、追求されても困る。
「トボけても無駄だよ。何せ三回も言ってたんだから」
「因みに聞きますけど、いつから聞いてたんですか」
「『本当、何なんだよ』くらい?」
「結構前じゃ無いですか!声掛けて下さいよ!!!」
まさかの全部聞かれてた。
思わず頭を抱えるが、神威はと言うと何故か少し楽しそうだった。
「謝罪、必要だよね」
「は?」
その瞬間、私は思った。
コイツ、これが言いたかっただけだ。
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黒猫 - いつも楽しく読ませてもらってます。続編楽しみです!頑張ってください。 (2018年10月6日 20時) (レス) id: 34ad78a799 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - 猫ウサギさん» 初めまして、お返事大変遅くなってしまい、申し訳ないです。そう言っていただけで嬉しいです。更新頑張ります! (2018年9月20日 21時) (レス) id: 9c5936b685 (このIDを非表示/違反報告)
猫ウサギ - 葵さん» はじめまして、猫ウサギです。始めて読みましたが、とてもお上手で面白いです。政略結婚なんてありがた迷惑だけど、これはこれでありだと思います。更新頑張ってください。 (2018年9月9日 13時) (レス) id: d707ed59f7 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。私も終わってしまうのはとても悲しいです。 (2018年9月2日 16時) (レス) id: 9c5936b685 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - めっちゃ面白かったです!!神威カッコいい!もう少しで原作が終わってしまうのが悲しい…。 (2018年9月2日 0時) (レス) id: 882a70ddb0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時:2018年8月23日 16時