まるで乙女 ページ35
・
沖田
いつもは馬鹿力ばかりが目立つが、流石は夜兎。足も速い。あっという間に姿が見えなくなってしまった。伸ばし掛けていた手の力が抜け、重力に従って、だらんと落ちる。
近くにあった小石を蹴って、ポケットに手を突っ込んだ。
「(……何やってんでィ、俺ァ)」
別に、こんな風に口論…というか怒らせるつもりでは無かった。いや、いつも怒らせてはいるが、そういうアレじゃなくて。
…Aの気にしている団子屋の娘の事なら、まあ察しは付いている。Aにだけ冷たく当たっているのも勿論承知の上だった。
それでも何もしなかったのは、単に、俺の好奇心が働いたからだ。
「(…見たかった)」
ほぼ間違いなく俺に好意を抱いているであろう団子屋の娘が、俺に言い寄っているのを見たAの反応を。
…いや。
……正確には、言い寄られている俺を見て、少しでも嫉妬に近い感情を抱いてくれれば良いと、そんな期待をしていたのだ、俺は。
俺は、屯所に向けて足を進め出しながら、思う。
「(…我ながら、情けねェ)」
乙女か、とツッコみたくなる程だ。とても一度気持ちを封印した野郎のやる事とは思えない。
こんな事ばかりしているから、俺はいつも後手に回ってしまうのかもしれない。何か起こす前に、何処の馬の骨とも分からない男に掻っ攫われてしまった。
そんな自分自身への、際限ない呆れた共に、俺は屯所に到着した。
＊
「……あの馬鹿女」
そんな俺を待ち受けて居たのは、やはり土方の怒り顔だった訳だが、それを軽く交わして、俺が団子屋に連れ出す前にAが仕事をしていた部屋を訪れると。
ーー在ろう事か、あの女の刀が放置されていた。
勿論、普段帯刀しているものではなく、予備だ。だが、だからと言って持っていなくてもいい訳が無い。
しかも、よくよく見れば放置されているのはそれだけでは無かった。書きかけの報告書等々もそのままだった。
「………」
恐らく団子屋から一度此処に戻って来る積りだったのが、さっきのやり取りにより、そんな事を考える余裕が無かったのだろう。
「…ったく、仕方ねェな」
少しだけ考えてから、俺は散らばったままの書類を纏め始めた。
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黒猫 - いつも楽しく読ませてもらってます。続編楽しみです！頑張ってください。 (2018年10月6日 20時) (
レス) id: 34ad78a799 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - 猫ウサギさん» 初めまして、お返事大変遅くなってしまい、申し訳ないです。そう言っていただけで嬉しいです。更新頑張ります！ (2018年9月20日 21時) (レス) id: 9c5936b685 (このIDを非表示/違反報告)
猫ウサギ - 葵さん» はじめまして、猫ウサギです。始めて読みましたが、とてもお上手で面白いです。政略結婚なんてありがた迷惑だけど、これはこれでありだと思います。更新頑張ってください。 (2018年9月9日 13時) (レス) id: d707ed59f7 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。私も終わってしまうのはとても悲しいです。 (2018年9月2日 16時) (レス) id: 9c5936b685 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - めっちゃ面白かったです！！神威カッコいい！もう少しで原作が終わってしまうのが悲しい…。 (2018年9月2日 0時) (レス) id: 882a70ddb0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時：2018年8月23日 16時
