若しかしたら、若しかしたら ページ11
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「…で、サボるんですよね。分かってましたよ、私は!!」
現在地、団子屋。
私はちゃんと見回りを行おうとしたのだ、私は!!けれども、総悟が『隊長命令でィ』と権力を乱用して、ここまで連れて来たのである。
因みに今いる団子屋は、私と総悟の行きつけの店。きちんと非番の時に、私はたまに顔を出していた。
「何言ってやがる。こうしてこの店の治安を守ってるだろィ」
「………ソーデスネ」
もう言い返すのも面倒で、適当に返しながら、もぐもぐと団子を頬張る。来たからにはしっかり食べなくては損だ。
そして、雨が地を打っている様子を何を思うでもなく眺めていると、不意に総悟が口を開いた。
「オイ」
「何ですか、隊長」
「今は敬語いらねェ」
「一応勤務中なんですけど!?」
だけど、わざわざそう言うってことは隊務に関係ない、プライベートな話だろうか。
それに、総悟は基本ポーカーフェイスなので分かりにくいが、妙に表情が大人しい気はする。
「俺がわざわざ連れ出してやったんでィ。むしろ感謝しやがれ馬鹿力」
「何だとクソドS」
こうして軽口は言うものの、やはり目は静かだ。……ん?
ーー連れ出してやった??
「……ねェ、それどう言う…」
「何か、俺たちに言いたいことがあるんだろィ」
「!」
私の言葉を遮って、放たれた言葉に、私は息を詰まらせた。喉が、ヒュッと音を鳴らす。直ぐに図星だと分かったのか、私から視線を逸らし、江戸の町を眺めながら、総悟は続ける。
「近藤さんが……あと一応土方の野郎も、気にしてたぜ。てめーが最近元気無いってな」
「……」
「あの人に心配かけねェようにって隠してるつもりだろうけどな。てめーは分かりやすいんでィ」
黙り込んだ私に、総悟は更に追い討ちをかける。隠せていると思ったいたのは私だけ。その時、また弱い考えが頭を過る。
……若しかしたら、若しかしたら、やめとけって言ってくれるかもしれない。近藤さんを守るのなら、そんなものはやめとけって引き止めてくれるかもしれない。
そんな、どうにもならない願い。
けれど、それにでさえ縋りたくて、私は口を開いていた。
「………私ね、結婚するんだ」
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黒猫 - いつも楽しく読ませてもらってます。続編楽しみです!頑張ってください。 (2018年10月6日 20時) (レス) id: 34ad78a799 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - 猫ウサギさん» 初めまして、お返事大変遅くなってしまい、申し訳ないです。そう言っていただけで嬉しいです。更新頑張ります! (2018年9月20日 21時) (レス) id: 9c5936b685 (このIDを非表示/違反報告)
猫ウサギ - 葵さん» はじめまして、猫ウサギです。始めて読みましたが、とてもお上手で面白いです。政略結婚なんてありがた迷惑だけど、これはこれでありだと思います。更新頑張ってください。 (2018年9月9日 13時) (レス) id: d707ed59f7 (このIDを非表示/違反報告)
陽奈(プロフ) - 葵さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。私も終わってしまうのはとても悲しいです。 (2018年9月2日 16時) (レス) id: 9c5936b685 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - めっちゃ面白かったです!!神威カッコいい!もう少しで原作が終わってしまうのが悲しい…。 (2018年9月2日 0時) (レス) id: 882a70ddb0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ryosukehar1/
作成日時:2018年8月23日 16時