午前0時を過ぎたなら ページ22
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日付が変わる。9月22日になった瞬間、勢いよく通知が溜まっていく。そんなのもお構い無しに、私は夜空に向かって息を吐いた。
「26歳かあ……」
去年も一昨年も、その前も。
ベランダで1人、彼女を思いながら誕生日を迎えた。
私は誕生日が憂鬱だ。歳を重ねた嬉しさよりも、琴葉と一緒に10歳から先を迎えられなかった寂しさが先行する。
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琴葉の死から2ヶ月後、無情にも私達双子の誕生日がやってきた。あの時はまだ、家族は哀しみの真っ只中にいた。両親も兄も、もちろん私も、思いっきり笑えない日々が続いていた。
恐らく日付を跨ぐ頃やったやろうか。
『Aちゃん、おたんじょうびおめでとう!』
夢の中に琴葉が出てきた。大好きな笑顔と明るい声、ズボンばっかり履いていた私と違い、こっちゃんはスカートを履くことが多かった。ピンクのドレスに身を包んだ琴葉に花束を渡される。
『じゃあわたしは別のとこに行ってくるね!』
『待って、こっちゃん!』
こっちゃんは振り返ることなく、遠い所へ行く。
『こっちゃん……! こっちゃん!!!』
1人にしないでよ。私を置いて行かないでよ。
どれだけ叫んでも立ち止まってくれないこっちゃん。私は涙が止まらない……
『A!』
そこで目が覚めた。声をかけたのは母やった。
『りえちゃん……?』
『どうしたん? 魘されとったで?』
『ん……、何でもない……』
心が痛かった。どれだけ願っても戻ってこない現実をまざまざと見せつけられた。その日の夜はなかなか寝付けなかった。
おかんが流星のお世話で何回か起きていたのも知っているほど、長い時間起きていた。
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「A?」
「ひっ……!」
振り向けば、メガネ姿のファラオが少し窓を開け、ひょっこり顔を出している。寝ていたと思っていたけど違ったらしい。
それにしても真夜中に暗闇の中から高身長のファラオが毅然と現れると、心臓が縮みそうになるな……
お化けには強い方やし身内やけど怖い。
「待って、Aまで怖がるの!?」
「予想以上に恐ろしいフォルムやった……」
「そんな怖がらせてるつもりは無いんだけどなあ……」
ブツブツ呟きながら左側に並ぶ。端正な横顔が暗闇の中で物思いに耽ける。
「……どうだった? この1年は」
亮はただまっすぐに私を見据えた。
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みゆし(プロフ) - 最近読ませて頂いてます!パスコードを教えて欲しいです🙇♀️これからも素敵なお話楽しみにしてます (2月11日 11時) (レス) @page40 id: b2f1dffa53 (このIDを非表示/違反報告)
rioyamakawa(プロフ) - この小説の更新待っています! (2019年12月14日 1時) (レス) id: faed70be53 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - rioyamakawaさん» ありがとうございます(;;) これからも頑張ります〜! (2019年7月23日 10時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
rioyamakawa(プロフ) - この小説占ツクの中で1番好きです!!これからも更新楽しみにしています!!! (2019年7月17日 11時) (レス) id: faed70be53 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - たむさん» ありがとうございます(;;) これからも頑張ります!!! (2019年6月30日 23時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年6月27日 22時