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こっちゃんこと琴葉は私の双子のお姉ちゃんだ。一卵性双生児のよく似た双子。初対面の人には十中八九驚かれるくらい顔が似ている。後ろ姿までそっくりで両親も時々間違えるくらいやから、他人の目から見れば違いはほとんどなかった。
大人しくて勉強や読書が好きなのが琴葉、そそっかしく運動や遊ぶのが好きなのが私。2人ともえくぼができるけど、琴葉には泣きぼくろがある。意外と違いは明確やったと思う。
『算数教えて!』
『ええよ! じゃあA、宿題終わったらプール行こ!』
『行く!』
お腹の中で一緒に育ち、同じ日に生まれた。両親、兄や弟とは違う特別な存在。お互いに友達はおったけど、1番に信頼していたのはこっちゃんやった。
『A、そない落ち込まんでやあ? 一緒に謝り行こ?』
おかんと喧嘩して1人で泣いていた時、ずっと隣にいてくれた。頭をポンポンとしてくれた。
『持久走1位ってすごい!!』
私が小3の持久走大会で1位になった時は1番に喜んでくれた。喧嘩をしてもすぐに仲直りできる。私にとってこっちゃんは唯一無二やった。尊敬の対象やった。
私もこっちゃんみたいに思いやりがあって、責任感が強い女の子になりたいって思っていた。
ずっと一緒にいたかった。でも16年前の今日、私達は突如として突き放されてしまった。
『A、優弥、病院行くで!!!』
夕方、おかんは電話応答するや、真っ青に顔色を変えた。私と兄を急かして車に乗せる。何が何だか分からなくて不安になる。
案内された場所は手術室前の家族待合室だった。遅れて父親も合流し、琴葉が出てくるのを待つ。
『手は尽くしましたが、娘さんを助けられませんでした。本当に申し訳ございませんでした……』
でも神様は残酷やった。執刀したと思われるお医者さんは涙ぐみながら頭を下げ、看護師さん達も気落ちしたように目を伏せる。
" 友達と児童館行ってくる! 6時には帰る! "
アクセルとブレーキを踏み間違えた車が児童館帰りのこっちゃん目掛けてぶつかった。数mに渡り吹き飛ばされ、全身を強く打った。夏休みが始まって2日目の夜、こっちゃんは誰も手の届かない遠い場所へ行った。
母は気を失い、父と兄は歯を食いしばって涙を堪える。弟も嫌な雰囲気を感じ取ったのか、大声で泣き始める。
あの空間は思い出したくもないほど地獄やった。
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みゆし(プロフ) - 最近読ませて頂いてます!パスコードを教えて欲しいです🙇♀️これからも素敵なお話楽しみにしてます (2月11日 11時) (レス) @page40 id: b2f1dffa53 (このIDを非表示/違反報告)
rioyamakawa(プロフ) - この小説の更新待っています! (2019年12月14日 1時) (レス) id: faed70be53 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - rioyamakawaさん» ありがとうございます(;;) これからも頑張ります〜! (2019年7月23日 10時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
rioyamakawa(プロフ) - この小説占ツクの中で1番好きです!!これからも更新楽しみにしています!!! (2019年7月17日 11時) (レス) id: faed70be53 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - たむさん» ありがとうございます(;;) これからも頑張ります!!! (2019年6月30日 23時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年6月27日 22時