【H×H】たまゆらの温もり (ページ3)

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「や～散々だなぁ。大丈夫かい？」

痛みとは違う涙が溢れそうになったとき、横から優しく声をかける存在があった。驚いて見やると、恰幅の良い小柄な男が苦笑を浮かべながら手を差し出していた。さらに違う意味で涙が溢れてきた。

「はい、なんとか……ありがとうございます」

手を取って立ち上がり全身を叩いて土埃を舞わせながら、港についてまだ数分なのに2回も転んでるな、とどうでもいいことを考える。

「オレはトンパ。まさかキミみたいな小さな子までハンター試験を受けに来るなんて驚いたよ」

その間に男は人の良さそうな笑みを浮かべて言った。特徴的な丸い鼻の下を人差し指で擦り、そのさらに下から白い歯が覗いていた。

少しの間だけ、返答に逡巡する。払いきった黒いケープの土埃をさらに払うふりをして、時間を稼いだ。

「わたしも、試験を受けに来た人たちのほとんどが野蛮でびっくりしてます」

「ハッハ、違えねえや！」

わたしの苦笑をトンパさんは大らかに笑い飛ばす。名乗らなかったことに関してなにも触れられなかったので密かに安堵した。

______なるべく名前は知られたくないし、実を言うと知りたくもないのだ。

「ところで、ザバン地区に行こうとしてるんだろう？」

「もちろん。でもどこに向かえばいいのかわからなくて」

「あそこから直通のバスが出てるから、それに乗るといい。いちばんの近道のはずさ」

そう言ってトンパさんは道路の向こうを指さした。常夜灯と上屋がささやかに並び、軒下では控えめな色のインターロッキングブロックを、やはり埋め尽くさんばかりの男たちが踏み倒している。バスの中もやはり人で溢れかえっており、乗車できなかった人たちが出入口付近の人たちと口論を繰り広げていた。なんだあの劣悪な環境は。わたしくらい小さいならギリギリ入り込めないこともなさそうだが、移動中に絨毯よろしく倒されてバスの一部の扱いをされるのがオチだろう。______中に入るのであれば。