クリスマスの雪 (ページ6)

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イブの夜　（中編）ページ6

「去年もね同じよ。待ち合わせ場所でず～っと待ってたのに来なかったの、彼氏が。
振られちゃったのね。寒い中ずっと立ってたから風邪ひいちゃうし、仕事もクビになっちゃったわ、最低。」

話の内容とは裏腹にAは楽し気だった。

「わ～、ここの公園キレイね～。」

木々にキラキラと輝くイルミネーションが施されている公園があった。
Aが楽しそうに入って行く。

「こんな所に公園があったんだ。昼間は全然気にも留めないのにね。」

ゆっくりとAを見守る様について行く男。

「あ！」

Aが立ち止まった。

「雪が降って来た！」

小さく白い雪が空から舞い落ちてくる。
Aがその雪を受け止めようと両手を空へと差し出す。

手のひらに落ちる雪を嬉しそうにみつめるA。
隣に立った男は、そんなAを優しくみつめた。

手のひらをみつめたままのAが話し出す。

「今年は誰もいなくて、予定もなくて、1人部屋で過ごすだけのクリスマスだった。
だけど、何故かあなたとこうして一緒に過ごしてて、・・・どうしてこうなったのかもわからないけど、とても楽しかった。・・・今日はありがとう。」

そう言って振り返ったAはバランスを崩し、それを支えようとした男の腕にしがみつくことになった。

「ごめん。」

急にドギマギしてきたAは、慌てて離れようとして男を上目で見た。

艶やかな男の瞳とぶつかる・・・

その瞳に吸い込まれそうに目が離せなくなる・・・

優しい男の顔がゆっくりと近づいて来て、Aもゆっくりと目を閉じていた。

男の腕にしがみついたまま、重なる口びる・・・

口びるが離れ、Aがフッと息を吐くと、男が自分のコートの胸の中にAを包み込んだ。

Aは男の温かいぬくもりに抱きしめられ、頬を胸に寄せた。

男の鼓動が聞こえる。

なぜだか、幸せな気持ちに包まれていた。