言ったって ページ43
Aside
佐久間「ふっか！！」
佐久間の声が病室に響いた。
胸ぐらを掴んだふっかの手の震えが
伝わってくる。
深澤「なぁ、Aっ……」
止めようとこっちに来かけた佐久間の足が、
ピタリと止まったのが分かった。
深澤「おまえにとって俺らはそんなに
頼りないか……？
自分１人で抱え込む方が楽だったのか？
俺らに話すことにしたのも、
めめにバレたからだろ……？
バレなかったら、
ずっと黙ってるつもりだったのか？」
違う……。
頼りないはずない。
それに言わなきゃいけないのも分かってた。
けど、今日まで言わなかったのも事実だ。
何を言っても言い訳になりそうで
答えることができなかった。
深澤「Aっ……」
ふっかの顔が見れなかった。
どれだけ苦しい表情を浮かべてるかなんて
見なくたって簡単に想像つく。
ふっかだけじゃない。
俺の存在が、みんなを苦しめてる。
じゃあもっと早くに言えば良かったのか？
けど、それで何かが変わったか？
もし、言ってたって……
A「……言ったって何も変わらないだろ」
深澤「……は？」
ふっかが言いたいことはそんなことじゃない。
頭では分かってるのに、
そんな最低な言葉が口をつく。
A「どうでもいいだろ。
もう俺終わってんだよ」
そう言った瞬間、頬に強い衝撃がはしった。
それから聞こえてきた、物が倒れる派手な音。
突然の衝撃のせいで
バランスを保てなくなった俺の横に
イスが転がっていた。
口の中に、鉄の味が広がった。
殴られたって頭で理解できたのは
一瞬後のことだった。
そんな俺を、ふっかが見下ろしていた。
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作者名：くらげ
| 作成日時：2021年10月17日 6時
