32話 ページ34
太宰side
天宮「それじゃあ僕達はこれで」
既に家に入って行った乱歩さんを追いかけるように家に入った歩斗くん。
彼等が同居していたなんて…
だから一緒に出勤しているのか。たまに歩斗くんが置いていかれてるけど。
中島「あの〜太宰さん?」
太宰「ん?なんだい、敦くん?」
中島「いや、あの…考え事ですか?」
太宰「ん?あ」
なるほど。
これは敦くんがそう云うだろう。
何せ、私が乱歩さん達の家の前で立ちすくみ黙っていたのだから。
太宰「一寸、ね?」
敦くんに向かって歩き始める。
太宰「…歩斗くんは乱歩さんが居れば何も要らないのか?」
聞こえないように呟く。
中島「何か云いました?」
太宰「いや、なんでもないよ」
正直云ってしまえば、私は初めて歩斗くんを見た時美しい女性だ、と思ってしまった。
其の時の気持ちが未だ残っているのか、彼を心中へと誘ってしまう。
毎回断られるが…
私が誘ってしまう程彼は迚も顔が整っている。
出来れば私にも其の顔や笑顔をたくさん見せて欲しいのだが如何せん彼は命の恩人である乱歩さんに一筋。
よって私は乱歩さんに見せている笑顔を遠巻きに眺めることしか出来ないのだ。
太宰「ん〜、辛いなあ…」
中島「何がですか?」
太宰「や、歩斗くん…あ」
つい声に出してしまっていた。
中島「歩斗くん?」
太宰「何ね、もう少し彼の笑顔を見れたらいいな〜と」
中島「歩斗くんの笑顔…」
勿論私にも見せてくれてはいるが其の数は乱歩さんが言わずもがなトップ。
あの綺麗な笑顔を間近で見れるなんて…
中島「確かに綺麗ですよね!
汚れが無いと云うか、無垢と云うか」
太宰「ふふ、矢っ張り敦くんもそう思うか」
私達2人が云っているのだから、彼は沢山の人を虜にしていることに違いない。
中島「でも…そんなこと云うなんて太宰さんらしくないですね?」
太宰「私らしく?」
中島「太宰さんは美女さんと心中するのが夢だとか云っていたので」
太宰「うーん…其れと歩斗くんとでは話が違うと云うか…」
これを恋心とは呼ぶことはないだろうが、彼が心から離れない時もある。
確かに今の私は私らしくない。
太宰「こんなに振り回されるなんて…」
まあ、何があろうと彼への気持ちが変わる訳では無い。
笑顔を私にも見せてもらえるよう努力していこう。
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作者名:星夢 | 作成日時:2017年1月7日 0時