sweet glacier～甘い氷河～6 (ページ7)

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ハッピーニューイヤーページ7

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「あっ…！」

酔いの回った足…とは言っても普通に歩けるけれど。
それが神社の砂利道となるとまた話は別で。
人の波に揉まれていることもあって、思わず躓いてしまう。

RW「A？どした！？」

ユウキ「…っと、大丈夫？」

両方の耳へと同時に届く声。

「うん、大丈夫…。」

思わず出たのは日本語。
だけどその瞬間感じたのは目の前にいる彼の安堵より、電話の向こうの固まった空気。

「あ、リョウク？ごめん、ちょっと躓いただけだから…。」

RW「…うん、そっか。Aはよく躓くからね。」

それはもうだいぶ昔の話。
まだ、私たちが付き合う前の話。
何度か足を挫いた私はいつもタイミングが悪くて。

「ごめん、気をつけます。」

RW「うん。僕は何もできないから。お父さんに迷惑かけないようにね。」

「…………。」

…わざと言ってるのは分かってる。
「何もできない」っていうのも、見えない彼を「お父さん」て言い続けるのも。

「リョウク、ごめん。そんなこと言わないで？」

結局冴えきらない頭で。
なによりこの状況で。
ゆっくり説明をすることが困難に思えて。
すごく端的だけど、今の気持ちを伝えたのに。

RW「ん？何がごめん？あぁ、躓いたこと？ホント気をつけなよ？笑」

そうやって声を明るくすることで、心は暗くなったんだと気づくのに。
そしてそれは、私の心も暗くするのに。

「ごめん、違うの。説明するから。説明するけど…」

「今は人混みだからまた後でもいい？」
そう聞こうとしたのに。

RW「ん。ゆーっくり考えてから説明、待ってます笑」

「…リョ」

RW「あー、年明けてるじゃん。ハッピーニューイヤー！笑」

「あ、ハッピーニューイヤー…。」

RW「じゃ、落ち着いたら連絡してね。出れるか分かんないけど。」

「…うん、じゃあ、ね…。」

音もなく切れた電話に、訳もなく涙が出そう。

何で実家に帰ってきたんだろう。
何で昔の同級生のお隣なんだろう。
何で一緒に年越しをしてるんだろう。
何で飲めないお酒を飲んでしまったんだろう。
何でお詣りに来てるんだろう。
何で躓いてしまったんだろう。
何で、何で…。

今日ここに繋がるまでの全てに罪悪感を感じるほどに頭が混乱していて。

ユウキ「Aちゃん、大丈夫？喧嘩でもした？」

「へ？」

ユウキ「いや…何で泣いてるの？」

…あぁ。

この鼻の奥がツーンとするのは、寒さのせいじゃなかったんだ…。