記憶のかけら ページ8
Ohtani side
空に高々と舞い上がった打球が、フェンスを越えて外野スタンドに入ったのを見て思わず声を上げた。あまり流れがなかったこの試合で一発を決められたのは大きい。
『、、、あ。』
スクリーンに大きく映し出された、俺の打球を持って満面の笑みの女の子。
すぐに図書館で会ったあの子だとわかった。この前あったときとは違い、メイクが前よりキラキラしていて、髪を後ろの高い位置で束ねている。赤いユニフォームがよく似合っていた。
どうしても彼女に元気になってほしかったんだ。でも試合においで、なんて言ってしまったせいで、あんまり野球に興味なかったらどうしよう、そもそも来てくれてもどこにいるかなんて分からないよな、とあれから色々とらしくもなくくよくよしていた。だからまさかこんな形で彼女が会場にいることを知れるなんて本当にうれしくて、思わず大きく手を振った。
「大谷くん、ありがとう」
彼女はそう言ったと思う。
やっぱり、なぜかわからないけど彼女には涙よりも笑顔がずっと似合うと思った。
そして、なぜかわからないけど、俺はそれをずっと前から知っている気がした。
***
「ねえ。翔平、さっきのあの女の子誰。まさか彼女?」
『…は?』
俺の2ラン本塁打が決勝点となり勝利を収めチームメイトは明日がオフということでバタバタとロッカーに下がっていった。かくいう俺も早めに出れば彼女に会えるかもしれないという、普段なら絶対にありえない思考回路で動いていた。そんなタイミングでの一平さんの一言に思わずグローブをつかんだ手を止める。
「だから嬉しそうに手を振ってた子。」
『ファンの子に手を振り返しただけ。ていうかそんな風に見えてたかな。』
「皆は普通のファンサービスって思ってるよそりゃ。でも四六時中一緒にいる俺を騙せると思う?」
『いや、別に何もないけど。』
「ふーん。ただのファンじゃないことは否定しないんだ。」
してやったりな顔で腕を組む男を思わず小突いた。勘がやけにいい所が憎たらしい。
「正直に言いなよ。別に責めてるわけじゃないんだからさ。」
『本当に何もないって。この前図書館に行ったとき館内で迷って案内してくれただけ。』
「へえ。それであの子ファンになっちゃったのかな?今日のあれで惚れちゃったんじゃない。」
何となく試合においでって誘ったことは言いづらかった。
それに、俺
『あの子、どこかで見たことある気がするんだよな、、、。』
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みび - 続きが気になります! (9月8日 23時) (レス) id: 4e8c4ab155 (このIDを非表示/違反報告)
るう(プロフ) - miya381117さん» コメントありがとうございます!頑張ります! (6月4日 16時) (レス) @page30 id: dfa5704a4e (このIDを非表示/違反報告)
miya381117(プロフ) - 続きが気になりすぎて眠れない^ ^翔平行けー! (6月1日 21時) (レス) @page29 id: e8bd8eef5b (このIDを非表示/違反報告)
るう(プロフ) - 桐山めぐさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてすごくうれしいです!!投稿頑張ります! (6月1日 17時) (レス) @page29 id: dfa5704a4e (このIDを非表示/違反報告)
桐山めぐ(プロフ) - こんにちは!このお話めちゃくちゃ面白いです♪大谷さん 主人公ちゃんに連絡出来ない日々を耐えてやっと会えると思ったのに、、主人公ちゃんに何もありませんように祈ります(T_T)続きも楽しみにしてます!応援してます♪♪ (6月1日 17時) (レス) @page29 id: bb3023c008 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るう | 作成日時:2023年5月26日 15時