The real fairy tale

出会い ページ3

Aside
「」→Aさん
『』→大谷くん


どうしよう、全く集中できない。

今日の授業を終えて課題をしに図書館に来て早2時間。
最初の方は締め切りが近いものから順調に進められていたのに、少し休憩を挟んだことがきっかけで今朝の夢を思い出してしまった。日付が日付だったので深く考え込んでしまってキーボードに涙がこぼれないようにするのに必死だった。

もう今日はダメかな、帰ろう。

そう思って席を立とうとしたとき背後から聞こえる声に思わず動きを止めた。

「日本語、、？」

私は小さくつぶやいた。この大学にも留学生は多くいるから不思議なことではないけど、皆、特に図書館にいる子は友達や先生と英語を話す事が多いので日本語を聞くのは久しぶりだった。しかも、振り返ってみれば思わず目を見張ってしまうほどの長身とがたいの良さである。ジーンズに黒いパーカーというラフな格好でありながらスタイルの良さは丸わかりだった。でも、、

「怪しい。。」

マスクをつけフードを被っていて、本を一冊もってさっきから本棚の周りをうろちょろしている。しかも何やら不機嫌そうに文句を垂れている。

『ったく嘘つき一平！司書さんなんもわかってないじゃん！自分で戻して来いって言われちゃったよ！この本どこにあったんだよくそー』

学生さんじゃないのかな、、？私は独り言(という名の文句？)からそう予想して彼が持っている本を見た。

“Politics for the baseball industry in the US” (アメリカの野球業界に対する政治)

政治学は私の専攻だ。題名を見てすぐに大体どこにあるか予想できた。周りはみんな勉強に集中しているし何より多分みんな日本語を話さないだろう。
これは私が行くしかないってこと、、かも？
私は小さく息を吐いて、久しぶりに日本語を口にした。
「あの、、、すみません。その本、場所分かります、、よ？」

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