The real fairy tale

きっかけ ページ2

Ohtani side

「ええ！俺？！？！ なんで俺が！！」

オープン戦前の練習試合終わりのベンチ前。
見事に自分のホームランで逆転サヨナラ勝利を決めた俺はクールダウンもかねて一平さんとキャッチボールをしていた。まだ客席にはファンの人たちも残っていて、俺と一平さんのキャッチボールをカメラに収めている人が目立った。

せっかくいい気分だったのに、目の前の彼の唐突なパシリのお願いに、俺は思わず叫んでしまったのだ。

「いやー、どうしても読みたい本があって母校の図書館で借りてたんだけどさ、今日返却期限なの忘れてて奥さんとディナーの約束しちゃったんだよね、、。球場出たらすぐ行かないと間に合わないから悪いんだけど、」

「はー？そんなの一平さん自分で行ってよ！自分の責任でしょ。ていうか1日くらい遅れてもいいんじゃない。」

「元々予約入ってたの割り込みで貸してもらったから無理！俺の大学の図書館、翔平んちからのほうが近いし！頼むよ！」

「、、、一平さん俺が誰だか分かってる？」

え、ついに本当に天狗になったの？とか何とか言っている彼に思わずため息をついた。別に返すだけだし行くのはいいけど、もしバレて静かな図書館をうるさくしたら相当な迷惑になる。

「心配しなくても、司書さん知り合いだから言っとくよ！それでいいでしょ？」

「、、、わかった。」

覚えとけよ。俺は小さくそう呟いて、一平さんの本を渋々受け取った。

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