The real fairy tale

大学生作戦 ページ24

Aside

世界のオオタニ大学生作戦は私と、山瀬先生、そして訳をすべて説明したデイビットの三人による綿密な作戦で実行された。まず、絶対に翔平さんの体に負担をかけないこと。私が翔平さんの家まで車を出し、構内の移動も基本的に車いすで行ってもらうことにした。そして、大谷さんだとバレないようにすること。一番後ろの席を使用禁止にしてもらって、一番目につかないところに座ってもらうようにした。

「よし、翔平さん、つきましたよ！」

『おー！』

きっと翔平さんにとっては小さな後部座席で眠っていた彼に声をかけると、大きな伸びをして、キラキラな目を輝かせた。今日の翔平さんはデートの時の私服ともトレーニングの時の練習着とも違い、ジーパンにトレーナーというかなりラフな格好だった。それでも絵になるのがうらやましいし、黒メガネの勉強モードの彼は、はっきり言ってかっこよすぎる。

「じゃ、今開けるので車いすに乗ってくださいね！裏口から教室に入りましょう！」

『車いす、いいって言ってるのに！右は動くから松葉づえで大丈夫だよ』

「それじゃ肩や腕に余計な負担がかかります！」

『Aってスポーツやってたから変なとこ目敏いよね…。』

「ファンは推しのいうことを聞くものですよー。」

『あー、そういう時だけ！』

ずるいぞー！と私をにらんだ翔平さんは心の底から楽しそうだ。車いすを押しながら廊下を歩く。毎日通っている道なのに、何だか数倍にも輝いて見えるから不思議だ。

『大丈夫かな…、俺授業なんもわかんなかったらどうしよう。』

「大丈夫です！山瀬先生は大胆な人ですけど、誰にでもわかるように嚙み砕いた例をたくさん出してくれますよ！それにこのクラスは、言っちゃえば翔平さんがどれくらい経済をまわしてるか、って話ですから、客観的に聞いたら凄い面白いと思います！」

『俺、全然お金使わないけど…』

「翔平さん。翔平さんはその存在だけで何十億ってお金が動いてるんですよ！！」

何でAが必死になってるの、と言って爆笑しだした翔平さんを無事席に案内することができた。一息ついて、私も翔平さんの隣に座ってノートを開いた。山瀬先生の授業楽しみだな。なんて考えながらシャーペンの準備をしていると静かだった右側から翔平さんの小さな声が聞こえた。

『A、ありがとね。俺のために。』

それを聞いて私も小さく頷いた。上手い言葉が見つからなかった。

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