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第六十六話【白紙の本】 ページ46

【ポートマフィア】

カリカリと万年筆が擦る音が室内に響いていた。綴られる文字に一切の迷いはない。そして、流れるように綴られていた文字はいつしか動きを止め、万年筆が机の上に置かれた。書き終わった書類を眺め、誤字脱字がないか確認する。確認し終わるとばらついていた書類の整理をした。一息つき、時計を見ると今は14日の十時五十六分だった。


(きっと今頃、向こうも昨日の事を覚えていない筈ね......)


私はそう思いながら、胸ポケットから一枚の紙を取り出した。表面だけが綴られた白い紙だった。


(ただ、今回の為に使ってしまうのは惜しいわね)


そう────其れは、ある"本"の一頁......


書いたことが事実になる「白紙の文学書」とも云われる物の一部だった。異能力よりも高等な存在であるものだ。紙に書かれた事は人の思考・記憶から物理的な事象の改変を行う。つまりは世界を変える力を持つ。その為、異能力無効化でも改変された事象を変える事は出来ない。


私はこれを利用して、世界を変えた。人々の記憶も事象も全て書いた事が元になって動いていた。


あの日の全ての人間の記憶と起こった事実を消すには......もう一度、あの日を繰り返す。繰り返す事で、失った時間を新しい時間が上書きする。書いたこと道理に物事が進めば、誰一人としてこの事を覚えていない。誰の記憶も残されないまま、世界は何もなかったように進み続ける。


書き終えたら、日付が変わる深夜零時を待つだけ。しかし、ただ時間が巻き戻るという事はあの入れ替わりの異能者が再び探偵社に荷物を送ることになる。それでは二の舞だ。だから、向こうの世界で起こる事象を少し(いじ)った。交通事故のタイミングを少しずらし、事故を装って荷物を焼失させた。そして、再び探偵社に荷物が届かないようにした。私達が再び入れ替わることがないというのなら成功したのだろう。


しかし後に残るのは、アクィラ・ファミリアの首領襲撃事件。襲撃者は黒いワゴン車に乗った五人組。彼等は武器の運び屋から武器を奪った。つまりは、あの車の中に多くの重火器が積み込まれていた筈だ。その状態で何らかの不運(・・・・・・)により事故が起きれば......

第六十七話【移ろう日々の中へ】→←第六十五話【秘められた真実】



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作者名:トキハル | 作成日時:2019年11月17日 14時

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