第四十四話【誰も知らない秘密】 ページ24
数十分後......
敦と鏡花は探偵社に戻ってきた。しかし、二人の顔は互いに浮かない顔をしていた。
「どうかしたのかい？」
「えっ......いや......」
「Aちゃんなら大丈夫だ。彼女だって戻ると言ってあるのだろう？」
太宰が二人の気持ちを汲み取って云った。
「それもそうなんですが......」
敦は鏡花の方を見た。鏡花は敦に顔を合わせると頷いた。敦はそれを見て太宰に顔を戻した。
「実は......」
敦は今までの経緯を話した────
「なるほどね......五年前から来た彼女は、私達ですら知らない膨大な数の情報を手にしていた。そして、一人で短機関銃の武装兵達を相手に、一人忽然と姿を消した......か......」
太宰と国木田は黙ったまま敦の話を聞いていた。三人が探偵社を去ってから、事件は思わぬ方向に動いていたようだ。しかし、難事件かと思われていた事件も、秋田の宣言通り一日だけで解決してしまった。
「こんな事は可能なのか？ただで冴え、あいつはこちら側の人間では無いんだぞ」
国木田は信じられない話を聞いたかのように呟いた。
「いや、言い方を変えれば、彼女だから出来たのかもしれない」
「それは如何いう意味だ？」
国木田が太宰に訊いた。
「私達でも彼女について知らない事の方が多い。おそらく私達の知らない力が事件解決に結びついたのなら考えられるが......もし、彼女が多くの秘密を抱えていたとしても、その口から語られることはないだろう」
「マフィアであれば尚更口は固いか......」
太宰はそれを聞き頷いた。
「そうであっても、この件で彼女には感謝しなければいけないね。彼女がいなければ更なる災厄が訪れていただろうから」
「あんなに大きな事件だったのに負傷した人がいたとはいえ、死者は一人もいませんでした。全部Aさんが事件を解決してしまったんです。誰一人の力も借りずに......」
「あの人は私達よりもずっと強い......でも私がマフィアにいた時もあんな人はいなかった......」
敦と鏡花はそれだけ云うと、黙ってしまった。
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作者名：トキハル | 作成日時：2019年11月17日 14時
