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第三十三話【運転手の正体】 ページ13

【敦side】
Aさんは周りを見渡すと、車の陰に隠れるアクィラの首領に近づいていった。そして何かを呟いた後、アクィラの首領から離れ、そのままの足取りで、僕達の方へ歩いてきた。


「遅くなりましたね 」


その声は、何時もの優しいAさんの声だった。でも、貴方はAさんじゃない。その考えがずっと頭の中を駆け巡っていた。ついその言葉を言いそうになるのをずっと我慢していた。その考えを消す為に、僕は倒れている武装兵に顔を向けた。


「あ、あの人達は一体何者何ですか?それに運転手が彼等に殺 されたって......」


僕はやっとの思いで言葉を口にした。Aさんは同じように武装兵の方へ顔を向けた。


「彼等の組織の名はパーガトリー......アクィラの首領殺 しを依頼されただけの集団です。それで、運転手の正体でしたね。表向きは運送業だったようですが、裏の顔があった。それは密輸組織の武器を運ぶ運び屋です。その密輸組織こそ、天城会です。つまりは、運転手は天城会の足として使われていた。そして一二日、運転手は密輸組織の武器を運ぶ為に車を走らせていた。しかし、武器を運び出されるという情報を得ていたパーガトリーはその車を襲い、運転手である被害者を銃で殺 し、車はそのまま奪われた。事件の顛末はそんなところです」


「そうですか......それよりも大丈夫ですか?一人で武装兵達に立ち向かうなんて」


「向こうじゃこういう荒事は日常茶飯事です。今更気にすることでもないですよ。それに私を殺 せる人間なんていませんから。例え海に沈められようとも空気のない所に放り出されようとも生き残る自身はあります」


「でも、危ない。怪我がなくて良かったけど......」


鏡花ちゃんは恐る恐るそして、心配そうに云った。


「そう思わせてしまったのなら悪い事をしてしまいましたね」


そう言って、Aさんは申し訳ないような顔をさせた。


「それでアクィラの首領には何を言ったんですか?」


「あぁ、それはただ内側に裏切り者がいるとね。首領というのは影武者を作るのが普通です。そして嘘の情報を流して居場所を悟られないようにする。現にほとんどの人はアクィラの首領が現地にいると思っている。だけど、パーガトリーに殺 しを依頼した者は首領がお忍びで来日する事を知っていた。その情報を知っているのは首領の側に使える側近に限られる。なので、其の者に報復措置をする事をお勧めしたまでです」

第三十四話【起こりうる未来】→←第三十二話【信じていた姿】



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作者名:トキハル | 作成日時:2019年11月17日 14時

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