第三十一話【煉獄の組織】 ページ11
【敦side】
辺りに静寂が起こった。ただその中で、
「異能力......『幻影と夜曲』」とAさんは確かにそう呟いた。そして、その言葉の後に銃が火を噴く事も無かった。
「さぁ、どうしたんです? その銃で私を撃つのではなかったのですか?」
相手を挑発するようにいうAさんは余裕がある様子で両腕を広げていた。もし、男がその距離で銃を撃てば当たる筈だったのに、男は何故かカタカタと震えながら銃を持っていた。
「ヒッ......!何をしたんだ......!?何だこれは!?」
そう云った男の首には黒い霧が漂っていた。霧は徐々に形を成していくのが分かった。黒い布切れから骨を覗かせ、目玉が無い虚無の穴からは冷酷さを感じさせている。
そう......そこには死神がいた。
死神は手に持つ鎌の刃を男の首筋に当てていた。男は恐怖で顔を歪めながら震えていた。それにより、その男に銃を撃つ余裕など全く無いのは明らかだった。
ただ、僕にはこの殺気に見覚えがあった。
それはAさんが此方側の世界に来た時に感じたものと同じだった。
(あの時の刃物が首に当たっている感覚って、もしかしてAさんの【黒】が......)
「貴方方は確か......"パーガトリー"という名の組織でしたね。任務といえば......主に殺 しを依頼を受ける事。好戦的で任務を遂行する為には方法も問わない組織だと......」
Aさんは男の様子など気にも止めずに話し出した。
「そ、それがどうした......」
「ある日、貴方方にある仕事が舞い込んできた。それも特上においしい話です。それはアクィラの首領の殺 害。違いますか?」
「......!どこでそれを!」
「ただ、その仕事を受けたのも最近だった......だから、武器を揃えるのにも時間が足りなかった。そして一昨日の十二日......貴方方は今日の為に何処からか武器を調達しましたね。いや、襲撃といっていいでしょうか?だって、一人の運転手が犠牲になったんですもの......」
「それが何だと言うんだ......」
「その所為でどれだけ私達に迷惑を被ったか......」
Aさんは溜息交じりに呟いた。
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作者名:トキハル | 作成日時:2019年11月17日 14時