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毒気のない夜陣に何となく赤面する二人。
レーレは他人には聞こえないようにつぶやく。
「二つ名つけんな、中2過ぎだろ……。
恥っず。
恥ずすぎ。
だけど……。
まさか、地を這うこの低音が、受け入れられるどころか、歓迎されるなんて……。
この男がどハマリな曲を作ったおかげ、なんだよな……」
せいかもぼんやり考える。
「確かに私の遺伝子は昨日とはもう違う……。
昨日までだったらいくら声質が可愛くても、歌姫になりたい、なんて、とても思えなかった……。
でも、学校のミスで収まるふんわり安全なポジションは壊された……。
この男によって。
私、私……!」
せいかは思わず叫んだ。
「DTM部をよろしくお願いしまーす!
一緒に音楽やりましょー!」
そして生徒からの質問タイムに移る。ブルーのとげとげ頭がさわやかな一年生が質問する。
「二曲とも知らない曲でしたが、オリジナル楽曲ですか?」
「作曲はうちの自慢のコンポーザー、夜陣くんよ!」
思わずせいかは返事してしまう。
「んで、作詞はこいつらふたりな!」
「え……」
固まるせいかとレーレ。
「お前らの書いてたポエムに曲を付けて、交換して歌わせた」
「そうなの?!
緊張でお互いの歌詞までは覚えてないけど、確かに言われてみれば私の書いたフレーズ、レーレちゃん歌ってたような」
せいかが戸惑いがちに理解を示すと、レーレが口を開いた。
「私も宿題とか言って詞を書かされたが……。
何で交換なんかしたんだよ?」
熱い拍手の中、舞台袖に戻った夜陣は言った。
「分かっただろ?
お前らのポエムと声は恥じて隠すべきもんじゃなく、武器だ。
オレと一緒に世界で戦える作詞能力と声質っつうな!
分かったら、オレに着いて来い。
オレは神に等しいコンポーザーになって、世界一の音楽家の証であるグラミー賞を獲る。お前らにはその楽曲を歌ってもらう。
ただのいち歌姫から、世界に通用する歌姫にしてやる……!」
ふたりは思わず、同時に返事していた。
「乗ったわ」
ふたりと別れた後、夜陣がつぶやいていたのは別の話。
「正直、ふたりともを……っていうのは難しいかも知れんがな。
連れていくのは、ひとりで十分。
まあ、保険をかけるために、今はふたり同時進行……悪くない」
せいかはにこにこしていた。
「歌姫になりたい!」
レーレは慌てていた。
「何だ歌姫って?!
ノリで返事しちまったが、私はごめんだせ?!」
ライバル作曲家現る!「新歓の曲に神を見たと思って来てみりゃ、非道のハーレム部だったとは恐れ入ったゼ」→←8
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作者名:ルスブ | 作者ホームページ:http://twitter.com/rusbsss
作成日時:2022年9月9日 10時