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そんなレーレの肩を夜陣がぽんと叩く。
「頑張れよ、レーレ」
「も……もう、仕方ねーな」
『世界が生まれ変わる 自分を手放すほど惹き合った
出逢いの化学反応 望み 憂いも生む』
「こわっ、誰だ?あの仮面の」
「仮面はサビでとる演出だろ、きっと」
「あんなに、小さいのに恐ろしく低音響くな」
『キミは笑って言った遠くても近くても
いつだって一緒にいると』
せいかの時と異なり、固まってしまっている観客に、レーレは不安を感じながらも歌う。
観客はレーレが妖艶過ぎて固まっていた。
『夢を信じ抜き追う姿見守るの
何にも揺らぐことはないんだろう』
夜陣は戻って来たせいかには何のねぎらいもせず、ひとりでレーレを分析していた。
「女子としては、いや人間としてもアリエナイ程の低音域の厚みとロングトーンが両立してやがる。
フフ、そうさせたのはオレだが……。
跪かせて上を向かせる&怒らせることで、がっつり喉仏を下げさせた。
さらに極限まで酸欠にすることで肺活を鍛えた……。
その効果、短期間でもはっきり現れたようだな」
『この宙を見上げて馳せる 七色の橋は夜でもきらり
溢れる想いを繋ぐ 同じ空の下見てると信じられるから
今なら分かる気がするんだ あの時笑っていたキミのこと
あの星を見上げて語る 今日より心躍る明日を』
レーレも滞りなく、歌い終えてしまった。
今まで張り詰めていた空気が弛緩し、喝采の渦が沸き起こる。
「かなり、背が低い……よな?
なのに、あの地を這うような甘い声……!」
「どこか男心をくすぐる温かみもあって……!」
「例えるなら男を引き摺り込む『魔女』のようだ!」
「顔が見たいっ!」
「おーい、仮面、取れー!」
一人の生徒が叫んだ。
「そーだ、取ってくれー」
取れとれコールが始まりそうなのを察したレーレは、これからでも暴露しようかとレーレが迷っていると、夜陣がせいかを連れてのらりと舞台に現れた。
とたんに再度沸く観客である新入生たち。
「前年度ミスターの夜陣だ!」
「かっこいいー!」
夜陣はにやりとした。
「遺伝子揺らがせふたり分完了……」
夜陣はDTM部の簡単な説明をした。
「このように歌ったり、作曲したりするのがDTM部の活動です。入部お待ちしてます!
この看板歌姫ズ、カナリヤ改め、『聖女』と『魔女』もいますんで!」
そう言うと、初めて邪気なくせいかとレーレに微笑んだ。
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作者名:ルスブ | 作者ホームページ:http://twitter.com/rusbsss
作成日時:2022年9月9日 10時