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樹は立て掛けてあったアコギを手に取ると、その譜面を弾き出し、一度たりとも間違えずにまるまる弾いてしまった。

 いや、間違えないどころか、樹は……。

「テメー、普通のギタリストがどうあっても弾けないように軽くアレンジしながら、弾きやがったナ?!」

「ふふ……どうあってもとは、不思議な表現ですね、どんなに難しくても、テクニックは練習すれば、いつか身に着けることができるはずですよ」

「こいつ! いーヤ、普通はどうあっても無理ダ、なぜならてめーはオレと同じで……」

「まあまあ、掴みましたよ!

からくりの正体!

五度の跳躍というのは広い方に分類されます。三度以上、つまり三音以上離れた音へ飛ぶことさえ、すでに跳躍進行と呼ばれ、多用すれば、ボーカリストに負担をかけるのに……。

五度でこのキーの高さは、ちょっと高音過ぎやしませんか?」

「テメー、弾いて気付いたことがこのオレが無意識にボーカリストに負担をかけようとしてルと?

気づかなかったゼ、さすが、と賛辞したいところだが、甘いナ。

サビ以外を、よく見るんだナ」

「あは、ですよね。

サビ以外の、AメロとBメロの部分はサビと似たリズムを刻んでるな、としか思わなかったけど……似たリズムでありながら、跳躍はせず、同じ単音を連打してる!

しかも比較的低音の連打だ!

これなら曲全体として、ボーカリストに負荷は掛かりづらい。

サビへ入るまでにリズムを聴き手にやんわり覚えさせ、サビで似たリズムでありながら五度跳躍することで、最高にキャッチーで爽快感のあるメロディに仕立てることに成功してる……!

この低音連打こそが、からくりの正体!

サビへの布石‼」

「つきとめたカ、その通りダ。

明確な分析、正直、聴かせるまでは迷ってたが、お前にこの曲を預けようとして、どうやら正解だったようだナ。

というか、任せタイ。

……で、この曲のギターソロの演奏は、任せてもいいのカ?」

「当たり前です。

預けようとしてくれたこと、絶対後悔させない出来映えのギターソロを、提供しますよ」

 龍華と樹の間に信頼感のようなものが芽生えた空気が流れた。

 樹はうきうきと、その譜面を貰って帰った。

盗作→←とげとげ頭のキレキレギタリスト



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設定タグ:青春 , 音楽 , オリジナル   
作品ジャンル:純文学, オリジナル作品
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作者名:ルスブ | 作者ホームページ:http://twitter.com/rusbsss  
作成日時:2022年9月9日 10時

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