傘を届けて ページ37
『ヌナ、傘持ってった？』
メッセージが届いたのは、
店の外に出た途端に降り出した雨を、
軒下でぼんやりと見つめ始めたところだった
最悪…
どんどん強まる雨に、
『雨降るなんて聞いてない』
とりあえず送ったメッセージ
『ごめん、すぐに届けるから待ってて！』
ただ、天気を見ずに出かけた過去の私への恨み言を送っただけで、
ごめん、なんて謝る必要もないのに
弟らしい返信と優しさと、
変な子犬が走ってるスタンプに、ちょっと穏やかな気持ちになる
『もうすぐ着くって！』
ん？
あんたが来るんじゃないの？
そう返信しようとしたところで、パシャパシャと雨の中急ぐ足音か自分の前で止まった気がして顔を上げた
「え…」
「ごめん、結構待った？」
「え、いや…え、なんでジョンスが？」
少し長くなった髪を耳にかけた彼が困ったように笑ったのを見て、
弟に何か言われたのだと気付いた
「…ごめん、ドンヘが；」
「いや、いいんだ！ちょうどドンヘと連絡とってたらAが傘持たないで待ってるって聞いて…近くにいたからさ」
「…ジョンス、靴どうしたの」
「え？あ！！！いや…」
左右の靴は同じ色なのに違う型
いくらおしゃれな彼でもそんな奇抜な格好をするわけはなく、
一日これで過ごしたなんて考えられない
考えられるのは、彼が弟からの連絡で慌てて家から飛び出して走ってきてくれたということだ
「あー…；」
「…ごめんね、わざわざ」
「や…ドンヘが『Aヌナが風邪引いたらどうすんのさ！早く！』って騒ぐもんだから；」
「…それで急いで？」
「うん…あ、ごめん、急いだのに傘これしか持ってこなかった；」
「ううん、ありがとう…えっと、送ってくれる、の？」
「…うん、もしよろしければ」
軒下から、彼の持つ一本の傘へ飛び込む
.
「ジョンス、そんなに傾けたらジョンスが濡れるよ」
「いや、大丈夫大丈夫」
「何が大丈夫なの(笑)」
「(笑)…買い物？」
「うん、あとドンヘのおつかい…さっきの店のコーヒーが美味しいからって豆を買いに」
まるで中学生みたいにぎこちない会話のやりとり
別れてから会ったのは
去年のドンヘの誕生日会
そのあと何度か連絡をとったけど、お互い忙しくて結局…
「…あのさ、A」
赤信号で立ち止まった二人
呼ばれて見上げると
彼も私を見下ろしていた
ぎこちなさの無い、自然なキスだった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 384人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「K-POP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルル(プロフ) - みきさん» すっごい、長編にしたくて困ってます(笑)いろいろと他のお話も終わってないので（泣） (2018年11月19日 0時) (
レス) id: e1a79c0ead (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 贅沢です〜！この話長編になりませんか？でもドンヘとチャンミンどっちも選べないよ〜本当に贅沢。(笑) (2018年11月18日 23時) (レス) id: cd9810eca3 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(引っ越し先)(プロフ) - ななさん» 温かいコメント、ありがとうございますT T そう言って頂けることに感謝感謝ばっかりですT T また少しでも楽しんでいただけるよう、ゆっくりペースではありますが頑張ります！！ (2017年3月19日 23時) (レス) id: ac42bfaff2 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 久々のルルさんワールドに癒やされます!!毎日いろいろあって、あっという間に時間が過ぎてしまいますよね。ゆっくり無理なく復帰してくださいね♪ルルさんのお話大好きなので、気長に待ってます！ (2017年3月18日 3時) (レス) id: 13344c0cfe (このIDを非表示/違反報告)
ルル(引っ越し先)(プロフ) - にゃふ〜さん» ありがとうございます！そうですね〜なかなか難しいものですが(>_<)ゆっくり待つしか、、ですね(*T^T) (2016年10月30日 23時) (レス) id: c066e3dba0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ルル
| 作成日時：2016年10月20日 0時
