二十三話 ページ39
再び咲かせたハスの花を夕に焼ける太陽に透かすように片手で持ち上げる。
「さぁ、浄土の花よ。彼岸に彷徨う魂を吾のもとへ導きたまえ」
その詠唱と共に再び咲いたハスの花弁は踊るように散り、渦を巻くようにクルクルと回る。
それらが全て水辺に浮かぶように落ちた時、私の目の前には可愛らしい少女が立っていた。
「で、出た!」
きょとんとした表情で私を見る少女の身長に合わせるように、私はその場にしゃがむ。できるだけ柔らかい笑みを浮かべるように努力しながら、警戒を煽らないように瞳の力を使って少女の内側を覗き込む。
「こんばんわ。私はA。君は冥ちゃんだね?」
「うん」
「突然でごめんね。実は君に驚かされて困っている人がいるんだ。
だから人をからかったりするのをやめてほしい。できるかな?」
彼女に悪意がなかったとしても、彼岸の存在が此岸の存在に近付くことはあまり良いこととはいえない。生も死も、本来ならば相容れない。
この地の底で眠る魔神の亡骸も、今を生きる者たちの毒になる。根本的に混じることなんて出来ないものなんだ。
「じゃあ、これからはお姉さんが冥ちゃんと遊んでくれる?」
その言葉に、少し声が詰まる。
わかっている。悪意はない。意図はない。多くある魔神の亡骸の全てが悪意があって人を傷付けている訳では無いことだって知っている。
不滅の肉体と膨大な力。消えた意思に反して、その残穢は人を傷付ける妖魔となる。
「…もちろん」
下手くそな笑みを浮かべて冥ちゃんに答えると、彼女は嬉しそうに笑った。
その無邪気な顔を、せめて生きている時に見てあげたかった。
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りー - 理由把握いたしました。先日は失礼なこと言ってしまって申し訳ありません。五月病など無理なさらないでくださいね。 (2021年6月3日 17時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
りる - とりまろ。様はもう小説は書かれないんですか…? (2021年5月31日 7時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
り - すみません絵じゃなくて小説です…誤爆しました… (2021年5月26日 18時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
り - イッキ見しました…ひゃえ…大好きです主様の絵好きです更新まってます!! (2021年5月22日 0時) (レス) id: d04a74515a (このIDを非表示/違反報告)
星 - 小説とても面白くて大好きです!更新頑張って下さい! (2021年4月25日 14時) (レス) id: 43b4052d04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とりまろ。 x他1人 | 作成日時:2021年3月31日 20時