2014/9（1） ページ11
久々に田村と吞みの約束をした日の夜。
待ち合わせ場所で顔を合わせるなり
「ごめん須貝、見たいテレビがあるから、今日うち来ねえ？」
と切り出された。
「おん、ええよ別に」
何なら外吞みより気楽、かつ安く済みそうやし。お前んち綺麗だし。大歓迎です。
「サンキュ、助かる」
「で、お前んち何か食うもんある？」
「あると思う？」
「自明だったわ」
まだ開いていた大学生協に乱入して、酒と、残り少ないメシつまみ類を漁る。手分けして袋を持ち、バカみたいに蒸し暑い空気の中を二人で歩き出した。
唐揚げ、枝豆、申し訳程度のサラダ、助六。あとビール。
がしゃっと一気にテレビ前のテーブルに並べる。
田村はぷちぽちリモコンを弄ってる。
「おーしおし、間に合った」
「時に、お前がリアタイして見たいほどのテレビって何よ」
時間的に、俺らのパーリータイム・深夜アニメの時間帯にはまだほど遠いし、映画の時間でもない。ただ今の時刻は、いわゆるゴールデンタイムだ。
「んー、懐古厨ごっこ？」
缶ビールのプルタブを二人同時に開ける。
時を同じくして始まったのは、かつてこの男・田村を一夜にして全国に知らしめ、その余波で彼のその後の高校生活を半壊させたという噂の、あのクイズ番組だった。
「みんな若いなー。テレビとか緊張するよねわかる」
孫を見るような視線で、枝豆片手に今年の高校生クイズを堪能している田村。
いやクイズは嫌いじゃないし、見るのは全然いいんだけども。
「なあ……高校生クイズって、3人1組やなかった？」
「なんか今年は2人1組らしいね」
そうなんや。高校生クイズと言えばトリオやと思ってたわ。
まあ、まあそれはいい。
「何か、見てるだけでムカつくんだが？」
「何が」
「こいつらぜってークイズしに来てねえだろ、人の金で夏のデートしにきてんだろ！！」
高校生クイズといえば、絆で固く結ばれた友と共に泣いたり笑ったりする『ひと夏の青春』ってやつだろ。
今年はウルトラクイズ形式で、スタジオ予選を勝ち抜いたらアメリカ横断になるそうだ。
……そんな大会に、男女ペアがいるのは一体どういうことだ。
「落ち着けよ須貝。すげー切ねえぞ、今のお前の背中」
「神聖なクイズの場所に……」
「お前クイズやってねえだろ」
とりあえず、爆発しろ。
付き合ってようがいまいが知らんわ。男女ペア、全組〇ね。
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作者名：しまむら | 作成日時：2021年7月10日 10時
