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「それでは、独歩くんもAくんも気をつけて帰ってください。」

先生は優しく笑って病院に帰っていった。

僕は手を振って先生に別れを告げた。

独歩さんはお疲れ様です、と先生に挨拶をした

公園に僕と独歩さんの二人が取り残される。

独歩さんは少し困ったような顔をした。


「あ〜…えっと…」

独歩さんは片手に重そうなカバンを抱えたまま、もう片方の手で後頭部をかいた

「一緒にお昼食べるなんて、ほんと、すみません…。
本当は先生と二人で食べたかったよね?
俺みたいなやつが来ていい迷惑だったよね?ほんとすみません…
普通に考えたらわかることなのに…気を遣わせてしまって本当に申し訳ない…」


急に口を開いたかと思えばそこからは流れるような謝罪と自分を卑下する言葉、ネガティブな言葉のオンパレード

変な人だな


グッと独歩さんのジャケットを引っ張って言葉を止める

首を横に振ってそんなこと思ってないと意思を伝えようとするけど独歩さんは困った顔をした。


「ごめんね、君が何を伝えたいのか俺にはわからないんだ…。」


独歩さんはまた謝った。


そっかあ、そうだよね


僕の周りには僕のほんの小さな変化で僕の動きを読み取ってくれる人が大勢いる。

学校の友達もだし、いち兄たちは視線だけで理解してくれることもある。

でもそれは僕と彼らが築き上げた時間や信頼がそうさせるのであって、今出会ったばかりの独歩さんには僕のことはわからないだろう

今日の昼食の時間、僕と先生の会話が成立していることがずっと不思議で、間に入ることもできず苦痛な時間にしてしまっただろうな

申し訳ない


独歩さんは一生懸命わかろうとしてくれた。

独歩さんがわかろうとしてくれる限り、僕も彼にとって、分かり合える存在に成りたい

もしかしたら僕が声を出して話せる人間になり得るかもしれないんだ。

僕を僕として見てくれる人。


僕はスケッチブックを取り出して、マジックで文字を書いた


『全然嫌じゃないよ。
僕はどっぽさんと仲良くなりたいな』


独歩さんの漢字は自信がなかったからひらがなで書いた。


独歩さんは意外そうに目を見開いた

「独りで歩くって書いて独歩って読みます。
よろしくね、Aくん」


そういうと優しく柔らかく、木漏れ日みたいに微笑んだ。

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作者名:ふふ | 作成日時:2021年2月24日 22時

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