10.畳の上は危険だらけ ページ10
頭を上げて相手を見る。
目が合った。相手は少し低く構えて私の腰の辺りを狙っているみたい。
…それなら、
踏み込んできた相手に腰をとられる。
その直前の瞬間、くっと身を斜めに引く。
相手は私に重心をかけていたこともあり、私が裾を指先で踏むとバランスを崩す。
前に倒れそうになるところを横から手を取り、私の腕を首に回した。
「…ふぅ、」
と、私の右手のナイフは彼女の首元にあった。
全てがあっという間のことで、見ているみんなはポカンとした表情をしている。堂上教官も、小牧教官も。
相手の子でさえ何が起きたかわかっていない。
まあ平たく言うと、私が相手を瞬殺したと。
「う、そでしょ、A…」
静まり返った部屋に郁の声が通った。
・
・
「あー信じらんないアイツ!」
寮の部屋で郁が叫ぶ。もう夜になっていた。
「なにが信じらんない、よ。郁も教官蹴るなんて信じらんないわ。」
「いやいや何言ってんの。1番びっくりしたのはあんたよ、A。」
郁を呆れ顔で見ていた私に柴崎が言う。
「ナイフなんか使いこなしちゃって。どこでそんなの身につけるのよ」
「そーだよA。あんなのできるなんて知らなかった。」
私はえへへっと軽く笑ってみせる。
「ちっちゃい頃、親が護身用にって剣道勧めたんだけどうまくできなくて。
竹刀が長いからじゃない?って言われたから、
ナイフとかを教わったの。
親戚にスタントマンみたいな人がいてさ。」
「それでナイフを使えるのね。ほんとにびっくりしたわ。」
柴崎が続けて言った。
「ちなみに、女子の防衛員志望って関東圏ではあんた達が史上初らしいわよ?全国でも数件目。」
「えっ、そうなの!?」
知らなかった。
そこで、食堂での小牧教官が思い浮かぶ。
私と郁のことを知っていたのも納得。
「なんで防衛員志望にしたの?」
柴崎に聞かれ、高3の検閲襲撃のことを話す。
ヒーロー、という単語も少し恥ずかしかったが言った。
「へえ、なるほどね。ヒーローを追いかけてきたわけですね。」
柴崎は心なしかニヤニヤしている。
「う、うるさい!郁も同じようなものじゃん!」
郁の理由も私と似通っていた。
場所は図書館ではなく書店だが、検閲から助けてくれた王子様に憧れて、と。
それでもやっぱりいじられるのは恥ずかしい。
「もう寝る!おやすみっ!」
無理矢理部屋の電気を消した。
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陽子(プロフ) - 早めの更新待ってます! (2017年7月16日 21時) (レス) id: 6132688738 (このIDを非表示/違反報告)
みっち - とっても面白いです!続き期待してます!! (2017年6月23日 2時) (レス) id: 345456b6a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽芽=ひめ | 作成日時:2017年4月8日 18時