検索窓
今日:4 hit、昨日:17 hit、合計:37,970 hit

10.畳の上は危険だらけ ページ10

頭を上げて相手を見る。


目が合った。相手は少し低く構えて私の腰の辺りを狙っているみたい。




…それなら、




踏み込んできた相手に腰をとられる。

その直前の瞬間、くっと身を斜めに引く。

相手は私に重心をかけていたこともあり、私が裾を指先で踏むとバランスを崩す。

前に倒れそうになるところを横から手を取り、私の腕を首に回した。


「…ふぅ、」


と、私の右手のナイフは彼女の首元にあった。




全てがあっという間のことで、見ているみんなはポカンとした表情をしている。堂上教官も、小牧教官も。

相手の子でさえ何が起きたかわかっていない。




まあ平たく言うと、私が相手を瞬殺したと。








「う、そでしょ、A…」

静まり返った部屋に郁の声が通った。





























「あー信じらんないアイツ!」

寮の部屋で郁が叫ぶ。もう夜になっていた。

「なにが信じらんない、よ。郁も教官蹴るなんて信じらんないわ。」

「いやいや何言ってんの。1番びっくりしたのはあんたよ、A。」


郁を呆れ顔で見ていた私に柴崎が言う。

「ナイフなんか使いこなしちゃって。どこでそんなの身につけるのよ」

「そーだよA。あんなのできるなんて知らなかった。」



私はえへへっと軽く笑ってみせる。

「ちっちゃい頃、親が護身用にって剣道勧めたんだけどうまくできなくて。
竹刀が長いからじゃない?って言われたから、
ナイフとかを教わったの。
親戚にスタントマンみたいな人がいてさ。」




「それでナイフを使えるのね。ほんとにびっくりしたわ。」



柴崎が続けて言った。

「ちなみに、女子の防衛員志望って関東圏ではあんた達が史上初らしいわよ?全国でも数件目。」

「えっ、そうなの!?」


知らなかった。
そこで、食堂での小牧教官が思い浮かぶ。
私と郁のことを知っていたのも納得。






「なんで防衛員志望にしたの?」


柴崎に聞かれ、高3の検閲襲撃のことを話す。
ヒーロー、という単語も少し恥ずかしかったが言った。


「へえ、なるほどね。ヒーローを追いかけてきたわけですね。」

柴崎は心なしかニヤニヤしている。


「う、うるさい!郁も同じようなものじゃん!」



郁の理由も私と似通っていた。
場所は図書館ではなく書店だが、検閲から助けてくれた王子様に憧れて、と。



それでもやっぱりいじられるのは恥ずかしい。

「もう寝る!おやすみっ!」

無理矢理部屋の電気を消した。

11.館内警備でトラブル発生→←9.畳の上は危険だらけ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (39 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
133人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

陽子(プロフ) - 早めの更新待ってます! (2017年7月16日 21時) (レス) id: 6132688738 (このIDを非表示/違反報告)
みっち - とっても面白いです!続き期待してます!! (2017年6月23日 2時) (レス) id: 345456b6a5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:陽芽=ひめ | 作成日時:2017年4月8日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。