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傭兵でナワーブ・サベダーという名なんてそうそういないし、1人しか知らない。
最後にお兄ちゃんと会話したのは8歳の時。グルカ村に行くお兄ちゃんを玄関でお見送りしたのが微かに記憶に残っている。もう18年も前だ。
お兄ちゃん!待って!って声をあげて扉を開けて追いかけたかった。
だけどあの瞳に今の自分が映っているはずもなく。
恐らく幼少期の自分しか映っていないんだろうなと思い、壁に向かって溜息をついた。
「あら、壁とお話するのが好きなの?軍人さん」
紫色の服を着た…仄かに香水の香りを立たせた女性が微笑んで隣に立った。
『いえ……賑やかな所に来たのは久しぶりなので。少し立ちくらみが…ね?』
「てっきり、そういう人かと思って。私はウィラ・ナイエル。貴方は?」
『僕の事はソルジャーとお呼びください』
「ふぅん……。そうだ、今から少し時間はあるかしら?貴方の部屋を案内しようかと思うの!」
『貴女が僕の案内を?ふふ…是非ともよろしくお願いします』
ウィラの右手を取り、触れるか触れないかの口づけをした。
「軍人っていうから強めな人が来るかと思っていたのだけれど、意外と紳士的なのね」
軍ではこういう事は習わなかったが、軍に訪れていたお偉いさんが幼少期の自分に同じ様な事をしたのを見て覚えた。
人の技術は見て盗んで覚えろと言うじゃない?
果たしてそれが本当に必要なのかは分からないのだが。
_______________________________
「ほらここよ。貴方の左隣はイライ、右隣はイソップ、正面はフィオナよ」
ウィラが1つの部屋のドアを開けて中に荷物を運んでくれた。
『わ………ベッドふっかふか…』
ベッドにぼすっと飛び込み身を預ける。
ふかふかのベッドに飛び込んだのは実に何年振りか。
枕に顔を埋めてじっとしていると、後ろからクスクスと笑い声が聞こえて来た。
「まるで子供みたいね」
『軍では簡易的な寝台だったので……』
他にも書庫や浴場、共同スペースはあるけれど今はパーティーに戻って楽しみましょう。とウィラが言ってドアを閉めて並んで歩き出す。
ふとドアが全開になっている部屋が気になって聞いてみた。
「あぁ、ナワーブの部屋よ。機嫌が悪いと呼びに行くまで寝てる事が多くって。今日はドアが全開なのね。」
閉めてあげようかとドアノブに手をかけるが好奇心が勝ったのだろう、椅子を寄せてベッドの側に腰掛けてしまう。
ウィラは察してくれたのか、後ろでドアの閉まる音がした。
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くろねこ(プロフ) - ありがとうございます!でき次第、送りますね〜! (2020年3月4日 9時) (レス) id: 754674e882 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃&リィル(プロフ) - くろねこさん» ぴぃやぁぁぁぁ!!(煩い)LINEから来てくださったんですね…ありがたやありがたや……主人公ちゃん書いて下さるんですか!?えーと、朝になったら小説用の垢載せときますんでそこに送って頂けたら幸いです!本当にありがとうございます! (2020年3月4日 0時) (レス) id: df3d8cbea7 (このIDを非表示/違反報告)
くろねこ(プロフ) - LINEの第五人格のやつ(語彙力なさ過ぎかこいつ)で流れていたのをポチったらめっちゃ素敵な作品でコメント秒速で打ってますw!!ゆっくりで構いませんのでぜひ完結まで見させて下さい!あと、宜しければ主人公ちゃん描かせて下さい! (2020年3月3日 23時) (レス) id: 754674e882 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃&リィル(プロフ) - 第五愛さん» 毎日!?話数少ないのに!?こんな駄作なのに!?……ありがとうございます!全身全霊をもって更新頑張らせて頂きます! (2020年3月3日 10時) (レス) id: abf8076506 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃&リィル(プロフ) - Laylaさん» ありがとうございます(´;ω;`)更新頑張らせて頂きます…! 何気に初コメですね……!! (2020年3月3日 10時) (レス) id: abf8076506 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃&リィル | 作成日時:2020年2月25日 19時