夢。 ページ7
二宮くんの肩に、なぜ今私はいるのか。
状況が掴めずに、私はそのまま固まった。
「...辛かったよな...沢山泣いただろ？」
すると二宮くんが、ゆっくりと離れて、私の頬に触れた。
二宮の手は少し震えていて、その手の体温は冷たいのに、なぜか温かく感じて、私は全身に鳥肌が立って、また私の目からはポロリと涙が溢れて、二宮くんの手を濡らした。
「...本当はオレもずっと好きだった。」
シーンと静まり返った校内に鈴虫の鳴き声だけが響き渡っていた。
あまりにも急展開で、これは夢なのか現実なのか。はたまたパラレルワールドに入ってしまったのか。私は宙に浮いた感じがして、何が起きているのかハッキリと理解出来なかった。
二宮くんは頬に落ちた私の涙を拭ってくれた。
「...もう泣かないでよ。」
まだ全然訳が分からなくて、私は返す言葉が出てこなくて、そのかわりにどんどん涙が溢れて、ついには泣き声まで出てしまった。
「...頼むから泣くな。な？」
そう言って私の頭を片手で引き寄せてくれた。
私は二宮くんの胸に顔を埋めていて、二宮くんは私を優しく撫でてくれていた。
「...っく...こ...これって...ユメ..？」
やっと出た言葉がこれだった。
「夢かなぁ...もしかしたら本当に夢かもな。」
「...や..やっぱり？んく...ぐ..ずそ..そう..だよね？」
「オレも夢かなぁって今思ってる。お前にこうして想いを伝えられる日がくるなんて思ってもみなかったから。」
そう言って撫でていた手が止まり両手でさっきより強く私を抱きしめた。
「...だけどどうやら現実みたいだよ？ほら...オレの心臓ヤバいくらい早いだろ？」
確かに二宮くんから感じる鼓動が、私にも伝わるくらいで、それはきっと私も同じ状態で。
「...う..そ？...んぐぐ..げ..げんじつなの？」
「そー。オレたち学校で抱きしめあっちゃってんの。」
そう言われた途端、今の自分の状態を理解して、急に恥ずかしくなって、とっさに二宮くんから離れた。
離れても二宮くんの顔がすぐそこにあって、私を見つめていて、小さく微笑んでいた。
「ど...？現実って理解した？」
そう言って私の頭に二宮くんの手が乗ってクシャクシャとした。
「二宮くんが私を...」
そう自分で口にした途端、私の中にジワリと血液が回ってきて、ようやく今起きている状態を理解し始めた。
「...やっと理解したか。」
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作者名：akiru | 作成日時：2017年8月12日 2時
