過去。 ページ44
「...へ..ヘックシュン！！あ〜もう！クシャミ止まんない！...ってか寒っ...」
体を震わせながら屋上に入って来た真新しい制服をした女。
寒いなら何で屋上なんか来るんだよ。
しかも変なクシャミしやがって。
あ〜あ...1人でゆっくりしたかったのに。
「...あ、こんにちは。」
「どーも。こんちは。」
オレはこのクシャミ女に作り笑顔を作って、ペコリと挨拶をした。
「寒いならこんなとこ来ない方がいんじゃない？」
オレは追い出すために仕掛けて見た。
「あ、クシャミはただの花粉なんで大丈夫です。ご心配ありがとうございます！」
心配してねーし。こいつ天然か？はたまたバカなのか...。
「この高校に奇跡的に受かりまして、そのお祝いに来たんです。」
はい、聞いてない。聞いてないのに勝手に話す奴。
典型的な天然だ。
しかも普通レベルの学校に奇跡的とか。
やっぱりこいつはバカな天然だ。
単純な奴はいーよな。
こいつ、悩みも何もないんだろうな。
「...私中学のとき、恥ずかしい話、ちょっとイジメられちゃってまして。やっとあの人たちから解放されたと思ったら、何か晴れ晴れしちゃいまして。解放的なとこってどこかなー。って考えてたら、ここが思いつきまして。1人お祝いにきたんです。」
何だこいつ...。
オレと丸かぶりかよ。こんな能天気そうな奴が...。
「ふ〜ん。それはそれは。おめでとうございます。」
オレは少しだけ頭を下げて言った。
「ふふふ...ありがとうございます。」
するとこいつは深々と頭を下げた。
「先輩は何してるんですか？」
あれ、オレいつのまにか先輩になったんだ？まぁわざわざ直すのも面倒だしいっか。
「オレは特に何でもねーよ。風に当たってただけ。」
「そうなんですか。でも本当風...気持ちいですね。」
「...あー。」
オレは基本的に1人が好きなはずなのに、こいつの空気が嫌いじゃなくて、害がなくて、この沈黙がなぜか心地よかった。
しかもこいつのカバンについてるの...あのレアキャラじゃねーか。
「じゃあ、失礼しました。先輩おじゃましました！」
そう言ってオレに向けたその笑顔は、衝撃で。
この笑顔がオレの脳裏を離れなかった。
運命なんか信じていないオレに、あの橋でまた出会えたことに、話しかけられずにはいられなかったんだ。
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作者名：akiru | 作成日時：2017年8月12日 2時
