演技。 ページ12
GWが開けるとすぐテスト週間がやってきた。
GWの最終日、舞花の家で勉強をした。とりあえず赤点だけは逃れたい。そんな気持ちで久しぶりに頭に叩き込んだ。
ひと段落ついたとき、二宮くんのドラマ録画してあるよって、見たいなんて一言も言ってないのに、再生ボタンが押された。
だけど...それを見たときなんとも言えない気持ちになった。
すごいとかそんな簡単な気持ちでは表せれない。
もしかしたら二宮くんはドッペルゲンガーで、学校用の二宮くんとドラマ用の二宮くんがいるんじゃないかって、本気で思った。
そんな私を見て舞花が「ほら、恋が始まったでしょ？」なんてまた言い出して。
だけど私は大きく首を横に振った。
そんなGW明けのテスト初日。
雨の中、黄色い水玉の傘を差して、いつもの橋を渡った。
するといつもの場所で久しぶりにビニール傘をさした猫背の人を見た。
声をかけるべきか。かけないべきか。
私に二択の選択を迫られる。
なぜか勝手に胸が鳴って『後者だ。』って言った。
テストで頭が一杯だし。
なんの意味ももたない、いい訳を自分にした。
傘で見えないように顔を隠してゆっくり足を進めたけど「はよー。」と聞こえて、その声にビクリと反応し、足が止まった。
水玉の傘から恐る恐る覗き込むと、私を見ている二宮くんがいた。
「あ...おはよ。」
今気づいたような演技をした。
「クシャミ。しないんだ。」
「うん..」
「相葉くんも鼻声治ってたわ。」
そう言って小さな水溜りを飛んで私の傘に少しぶつかり、横に並んだ。
「相葉くんも...花粉症なの？」
「そそ、あいつもこの時期いつもティッシュ持ち歩いてんの。」
分かる。
なんならボックスティッシュを持って歩き...
「しかもボックスで。」
いま考えてたことが読まれたみたいで驚きと共に笑い声がこぼれた。
「何笑ってんの？」
「私も...教室の机にティッシュ置いてる。」
「花粉症ってティッシュ代もバカになんねーな。」
「ふふ...うん。なかなかね。」
二宮くんが足を一歩踏み出したから、私もつられて歩き出した。
この光景は、なんだか久しぶりな感じがした。
「...テスト勉強した？」
「オレ？だから何回言わせんのよ。俺はVIP待遇だって言ってるでしょ？親が2億円...」
「ふふ...もう..！何回言うの？」
秘密がバレてしまったせいなのか、二宮くんの一言一言が脳裏に刻まれて、私の胸が勝手にざわつき始めた。
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作者名：akiru | 作成日時：2017年6月8日 1時
