第七十五話 ページ35
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その鳳仙に神威が近ずいていく
神威「人あわれなものだねえ
己にないものほどほしくなる
届かぬものにほど手を伸ばす
夜王に無いもの、それは光
旦那、貴方は太陽のせいで乾いてたんじゃない
貴方は、太陽が無いことに乾いていたんだ
誰よりも憎み、恨みながらも、
誰よりも羨み、憧れていたんだ、
俺達がけして手に入れることのできない太陽に
冷たい戦場ではなく、暖かい光の下で生きることに
けして消えない、その目の光に
故にその光を奪った女達を、己のいる夜、この常夜の国に引きずり込んだ
そして、それでもなお消えぬ光を
憎み、愛したんだ」
鳳仙「クックク、愛？
一体そんな言葉、どこで覚えてきた神威
そんなものわしが持ち得ぬのは貴様がよく知っているはずだ
わしと同じ道を歩む貴様であれば神威、お前はわしとおなじだ、戦うすべしか知らぬ
欲しいものはすべて戦って奪う
気に食わぬものもすべて力でねじ伏せる
愛も憎しみも、戦うことでしか表現する術をしらぬ
神威、お前もいずれ知ろう、年老い、己が来た道を振り返ったとき
我らの道にはなにもない...
本当にほしいものを前にしても、それを抱き締める腕もない
爪を突き立てることしかできぬ
引き寄せれば引き寄せるほど、爪は深く食い込む
手を伸ばせば伸ばすほど、遠く離れていく」
そう言いながら鳳仙は太陽に向かって掴むように手を伸ばした
鳳仙「なぜ、お前さえもわしを嫌う
なぜ、お前さえわしを拒む
なぜ、こんなにもこがれているのに
わしは乾いていく見えぬ、もうなにも...」
＊
死ぬ間際の鳳仙のもとに日輪が来て膝枕をした
鳳仙「ひ、日輪」
日輪「やっと、見せてあげられた
ずっと、見せてあげたかった
この空を、あなたに
言ったでしょ、きっとお日様と仲直りあせてあげるって
わたし、知ってたのよずっと
どんなに威張りくさったって
どんなに酷いことしたって
貴方は夜王なんて大層なものじゃないってことくらい
貴方はただ、こうしたかったのよね
こうして日向で居眠りしたい普通のおじいちゃんだったのよね
ただそれだけなのに、なのに、こんな馬鹿げた町まで作って、みんなを敵に回して」
日輪は涙を流す
日輪「馬鹿な人、本当に馬鹿な人」
鳳仙は日輪の膝の上で眠るようにして死んだ
＊
ぱちぱちとその場に似つかわしくない拍手が送られる
拍手をしている人物は神威だった
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あずきいろ
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8
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坂威瑠衣(プロフ) - 怜斗さん» コメント有難うございます！そう言っていただけると凄く嬉しいです (2018年8月28日 11時) (
レス) id: 3a67c0c35e (このIDを非表示/違反報告)
怜斗 - 面白いです！！はやく続きがよみたいです！ (2018年8月19日 12時) (レス) id: 62ec5422b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：坂威瑠衣 | 作成日時：2018年8月7日 5時
