チョコバナナには手が届かない (ページ8)

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今日は千冬さんと一虎さんが忙しなく動いている

なんでも、たまたま私が来た時は定休日だっただけで、今日は営業があるからだ

開店してからすぐ、女のお客さんが現れた

「いらっしゃいませー」

千冬さんが、爽やかな笑顔を振り撒く

「あら？」

と、そのお客さんは私に気づいて、

「この子、新しい子？真っ白ね！可愛い！」

相当な猫好きなんだろう

私の頭を優しく撫でてきた

撫で方が上手…気持ちい…

と気持ちよさに浸ろうとすると、ぱっと手は離れ

「けーくん！いつ見ても可愛いねー！」

「にゃ」

同じように撫でられて、場地も喉を鳴らす

喉…なるほど！たしかに猫って喉鳴らすじゃん！

と、またお客さんは場地のもとを離れて、千冬さんのところへ行く

そのまま千冬さんとお客さんの会話を聞いていると、さすがの私でも気づいた

このお客さん、千冬さんが好きなんだ！

もちろん私や場地のことも可愛いって言ってくれるけど、あれは千冬さん狙いだ

なるほど

と1人納得していると

「シャー！！」

初日に私が聞いた、場地の威嚇の声がした

ぴょんぴょんっと店の物やキャットタワーから飛び移って、千冬さんの腕の中にするりと入り込む

「ちょっと、けーくんどうしたんですか？すみませんね、いつも何故か威嚇ばっかりで…さっきは何とも無さそうにしてたんですけど」

「あ、いいんです！…けーくん、あなた賢いのね…」

「？」

お客さんの言葉の意味が分かっていないのか、千冬さんは首を傾げている

なるほど、千冬さんは鈍感っと…

お客さんも帰り、場地が千冬さんのところから戻ってきた

《さっきのあれ、どういうつもり？》

〈あ？だってあの客千冬目当てだろ。千冬は鈍感で気づかねーし…〉

《ふーん、ほんと場地千冬さんのこと大好きなんだねー》

〈なっ、そういうわけじゃっ〉

千冬さんは鈍感だけど、場地はわかりやすいっと((

〈…あの客、常連なんだよ。千冬だって、何回あの客に笑顔見せたんだ…って…〉

《ほらー！絶対そうじゃん！場地、千冬さん取られたくないんでしょ！》

この言い合いも、千冬さんから見れば猫同士がにゃーにゃー言い合っているだけである

「はぁ、癒し…」

この言い合いっている様子(可愛い)を録画されているなど、私たちは知らない