チョコバナナには手が届かない

#18 ページ18

千冬さんたちの目を盗んで、店の隅に場地を呼び出した



〈あ？こんなトコ呼び出して、ケンカでもするつもりかぁ？〉

《まさか！？第一、場地にケンカで勝てるわけないって！》



だって初日にガン飛ばしてきたあの場地だよ？絶対ケンカ強いって


右ストレート(猫パンチ)で一発KOになるよ


絶対



《…これから言う話信じてくれる？》

〈なんだよ、そんな改まって〉

《実はね…




私人間になれたの！》






〈は？〉






長い沈黙が流れる




《あの、だから私人間に…》

〈聞こえなかったわけじゃねぇワ！！〉



なぜかキレ気味で言われた



〈お前まじで言ってんの？だって今猫じゃねーか。ここで今人間になってみろよ〉

《いやだからね、どうしてなったのかもわかんないんだって》

〈ますます意味わかんねぇ〉




まず、こんな話をあぁそうかと簡単に受け止められるはずがない


場地は正しい



猫が人間になる


そんなこと現実であるわけないのだ



〈でもAのことだし、んなつまんねー冗談言うやつじゃねぇしなぁ…〉

《…あの日何か特別なことといったら…



そうだ、月が無かった》

〈はぁ？月はあるに決まってんだろ〉

《そうじゃなくて。新月だったの》



月明かりがほしくて、カーテンを開けたのに月が無かった


それは新月だったからだ



《これは私の推測でしかないけど、もしかしたら新月の夜に人間になれるのかも》

〈新月ゥ？なんか関係あんのかよ〉

《さぁ…でもとにかく、私と唯一話せた場地も、人間になる可能性があると思うんだよね》

〈人間のオレ、な…〉

《そして驚くべきことに！なんと人間になったとき真っ裸なのだ！！》

〈っはぁ！？〉



ゲホゲホと咳き込む場地




いや、この事実はすごい重要だと思う。うん。




《つまり、服を用意しておかないと！》

〈服っつったって、ンなもんねぇし…〉

《よし、服を探そう場地》





かくして、まずは一虎さんの部屋に向かった

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