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蓮巳side
夏休みが明け、もうすぐ冬になろうとしていた。
しかしその間、Aはずっと学校に来ていない。
敬「…いただきます」
今日もAが来るのを期待して屋上で弁当を食べる。
…また、一緒に話せる時は来るだろうか。
『メガネさん、やけに暗い顔ですね…。まあ、私も人のこと言えませんが……。』
幻聴だと思った。
声のする方を見るとそこには、Aが立っていた。
相変わらずの無表情で。
『…私を笑わせてみせるって言ったのは一体誰でしょうか。蓮巳先輩』
敬「っ、名前……」
『あんだけ自己紹介されて、忘れる方が難しいですよ…。』
敬「それも…そうだな…。」
Aは俺の隣に座って弁当を広げる。
『……お父さんの話、していいですか？』
敬「Aが話すなんて珍しいな…。別に構わん。」
その日はAの父さんの話をされた。
何を聞かされるのだろうと思っていたが、予想以上に残酷なものだった。
『それで、言われたんです。…お前が笑うと気味が悪いって……。』
敬「………」
『それから、私は一切笑わなくなりました…。』
Aの笑顔は可愛くてこっちまで幸せな気持ちにさせる。
…それを気味が悪いだなんて……。
敬「だが、もう父さんはいないんだろう？なら別にいいんじゃないのか？」
『…なにがですか』
敬「笑ったって何したって構わないのではないか？
…俺は、Aの笑顔がきっと好きだ。」
Aは一瞬、目を見開いた。
『…んっふふ、そんなこと言われたのは初めてです』
その日初めて、Aは満面の笑みを俺に見せてくれた。
…あぁ、やはり好きだ。
『私、蓮巳先輩のおかげでもうちょっと生きてみようって思えたんです。
どこかに、毎日ここで蓮巳先輩に会えるのを楽しみにしていた自分がいました。
…へへっ、ありがとうございます。』
この笑顔を一生守り続けたい。
俺は当時、静かに心の中で誓った。
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作者名：るる | 作成日時：2022年8月31日 20時
