■仮面とサイレンの間に■4 (ページ16)

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･その6 ページ16

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自分の前に立ちはだかるザミーゴの影に、闇に、溺れてしまいたくなる。
しかしその冷たい世界に飛び込むための一歩を、アリスはまだ踏み出せないでいる。

「……私がニンゲンなのか聞かれても、答えられない。
自分のことも昔のことも……何も、知らないから。」

ザミーゴ「へえ、どうして？」

「どうして？……わたしは……どうして……何も……っ」

震えた声で、しどろもどろに話すアリスはまるで何かに怯えた幼子だ。
青ざめた顔で黙り込む彼女をみて、ザミーゴは喉の奥で噛み殺すように笑い声をたてる。

ザミーゴ「くくっ、そうかそうか。
やっぱりボスがやったんだな。記憶を消すなんて芸当、うち(ギャングラー)でできるのはあの男(ドグラニオ)くらいなモンさァ。」

ボス、という言葉に反応したアリスはパッと顔を上げる。
その反動で、琥珀色の瞳からポロポロと涙が溢れ落ちていく。

ザミーゴ「俺がお前を傍に置いているのは、利用価値があるからだ。子猫ちゃん……ギブアンドテイク、って分かるか？」

ふるふると首を大きく横に振るアリス。
その仕草がいつもよりもどこか幼く、感情的になっている。

ザミーゴ「もらった分与えるってことさァ。
一応、アンタには〝貸し〟がある。任務でのハナシだがな。
……つまり、俺がその〝記憶探し〟を手伝ってやらんこともない。ひひっ、ただし気が向いたらの話だ。」

彼が気分屋なのは組織の中ではよく知れたことだ。
だからこそ、こんな風に不確定な話を持ちかけてくること自体が珍しいのだ。

ザミーゴ「まっ、せいぜい頑張りな～。」

いつの日かにも言われた、彼からの淡白な励ましの言葉。
だが今は、それさえもわずかな希望に思えた。

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記憶を探したら、記憶を見つけたら、何があるのだろう。

自分の過去？正体？

それは知るべきことなのだろうか。
知れば良いことが起きるだろうか。
知らなければならないことなのか。

分からない。

けど、私は知りたい。

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