マネージャーが塩対応【2j3j】【knmc】

おはようの塩 ページ8

とある平日の早朝。

一台のスマホが唐突にバイブを始める。
持ち主が止めない限り治まらないその振動は、意外にも早く眠気眼の青年によって止められた。


剣「…ぁい、剣持です…」


スマホの持ち主である剣持刀也は寝起き特有の掠れ声で電話の向こうの人物に声を届けた。

電話の向こうからは呆れたような、疲れたようなため息が小さく聞こえた。


『おはようございます剣持さん、起きましたか？』

剣「あ、はぃ。……芦戸さんおはようございます」

『…さっさと覚醒してください。今日は部活の朝練なんでしょう？なんのために私がこんな朝っぱらからモーニングコールしたと思ってるんですか』


現在の時刻、AM5:30。

前日、芦戸Aは朝練がある剣持から起きれる気がしないのでモーニングコールをして欲しいと少し気まづそうに頼まれたのだ。

数秒の間の後、渋々といった様子でAは頷いたわけだが。

実はこの芦戸Aという女、朝にものすごく弱いのだ。
しかも寝起きが悪い。

いつもの塩対応に寝起きの機嫌の悪さがプラスされるため、人相も口も悪くなる。

前日の剣持の気まづさは、それを知っている上での申し訳なさからきていた。


『はぁ、ちゃんと朝ごはん摂ってから行ってきてくださいね』

剣「はい、ありがとうございます」


ただA自身も寝起きの悪さを自覚しているため、今回のように事前に朝の予定が入っていればその時間に合わせて自分の機嫌を治しておくのだ。

なので実質Aは朝の4時ぐらいには起きていることになる。
そこから時間をかけて自身のコンディションを整えていくのだ。

だから、今回は通常の塩対応である。


『朝練に遅れずに計画的に行動してくださいね。二度寝したら許さないですよ、私はこれから二度寝しますけど。気を付けて行ってらっしゃい』

剣「朝弱いのに僕の我儘聞いてくれてありがとうございました。行ってきます、芦戸さんはおやすみなさい」

『………はい、おやすみなさい』


プツッと静かに電話が切れる。

ベッドの上に座ったまま、通話終了の画面が映し出されたスマホをAは数分見つめた後、急に思い出したようにスマホを軽くぶん投げて勢いよく布団を頭から被った。


『……おやすみ……気を付けて』


Aしかいない静かな部屋に、小さな呟きが響いた。

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