続 ページ2
彼女はミステリアスな雰囲気を醸し出していて、風で白い毛量のある髪が揺れた。
驚きながらも立ち上がり、Aはお礼を言うために向き直る。
天女は目隠しをしているが、こちらをじっと見つめているような気がした。
「あの、ありがとうございます!」
「いや、礼はいい。私はただ鬼を切っただけだ。」
頭を下げたAに、彼女は淡々と表情の無い声で告げる。
Aは頭を上げた。
「いや、お礼は返したいです!」
「だからいいと……」
「いえ、是非!!」
「いや…」
「是非!」
「………。
あいわかった。」
「やった!」
攻防の末、Aが勝ったらしく、彼女はめんどくさそうに頭を搔く。
天女のような彼女にも人間のような1面があるんだな、とAはふと思う。
まあ、まだ会ったばかりなので知らない1面があるのは当たり前だが。
「僕は晴継Aです!
あなたはなんて言うんですか?」
「………はるつげ。」
Aが自己紹介をすると、彼女は目を丸くする。
頭にはてなマークを浮かべたAが首を傾げると、咳払いをした。
「失礼。
私は
…よろしく」
世界と名乗った彼女は握手しろ、と言わんばかりに手を伸ばした。
一瞬固まったAだが、慌てて握手をする。
「で、礼というのはなんだ。」
「ああ…実は、うちに来て欲しくて。
うち、…あっ、晴継家は代々森の奥で薬屋さんをしてるんですが、人手が足りなくて…。
なので、世界さんに手伝ってもらいたいんです」
「なんだ、そんなことか。
いいぞ」
「本当ですか!?ありがとうございます!!」
世界からの了承を貰うと、Aは飛び跳ねて喜んだ。
もちろん比喩じゃなく、本当に飛び跳ねてだ。
「じゃあ、早速行きましょう!
きっと、うちの家族が喜びます!」
世界の手を引いて走り出すA。
世界は少しだけ微笑んだ。
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:いふらいと | 作成日時:2023年5月14日 19時