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彼女はミステリアスな雰囲気を醸し出していて、風で白い毛量のある髪が揺れた。
驚きながらも立ち上がり、Aはお礼を言うために向き直る。
天女は目隠しをしているが、こちらをじっと見つめているような気がした。

「あの、ありがとうございます!」
「いや、礼はいい。私はただ鬼を切っただけだ。」

頭を下げたAに、彼女は淡々と表情の無い声で告げる。
Aは頭を上げた。

「いや、お礼は返したいです!」
「だからいいと……」
「いえ、是非!!」
「いや…」
「是非!」
「………。
あいわかった。」
「やった!」

攻防の末、Aが勝ったらしく、彼女はめんどくさそうに頭を搔く。
天女のような彼女にも人間のような1面があるんだな、とAはふと思う。
まあ、まだ会ったばかりなので知らない1面があるのは当たり前だが。

「僕は晴継Aです!
あなたはなんて言うんですか?」
「………はるつげ。」

Aが自己紹介をすると、彼女は目を丸くする。
頭にはてなマークを浮かべたAが首を傾げると、咳払いをした。

「失礼。
私は中天(ちゅうてん) 世界(せかい)という。
…よろしく」

世界と名乗った彼女は握手しろ、と言わんばかりに手を伸ばした。
一瞬固まったAだが、慌てて握手をする。

「で、礼というのはなんだ。」
「ああ…実は、うちに来て欲しくて。
うち、…あっ、晴継家は代々森の奥で薬屋さんをしてるんですが、人手が足りなくて…。
なので、世界さんに手伝ってもらいたいんです」
「なんだ、そんなことか。
いいぞ」
「本当ですか!?ありがとうございます!!」

世界からの了承を貰うと、Aは飛び跳ねて喜んだ。
もちろん比喩じゃなく、本当に飛び跳ねてだ。

「じゃあ、早速行きましょう!
きっと、うちの家族が喜びます!」

世界の手を引いて走り出すA。
世界は少しだけ微笑んだ。

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作者名:いふらいと | 作成日時:2023年5月14日 19時

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