【金カム】愛に彷徨う[男主] (ページ4)

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Aにとっていろんな習い事をしてきたが、1番好きな習い事は射撃とピアノだった。

ピアノは自分の気持ちを代弁してくれると思っていたからだ。幼いながらに心がここに在らずなAにとって癒しの物でもあった。

「A様」

自分の名前を呼ぶのは、いつも身の回りの世話をしてくれる執事だった。

「…なあにじぃじ」

ピアノを弾くことをやめずに名前を呼んだ者に問いかける。ピアノの旋律は段々と暗い旋律へと変調する。

「お父様が帰って来られます。玄関までお迎えにいきましょう。」

途端にピアノの音が止む。執事にとってこれ程長く感じた時間はなかった。執事からはAの表情は読めないが僅かに肩が震えている。

「…じいじ。僕が…。もし僕が何かしても怒らないでね…。」

執事はその言葉の意味がわからなかったが、可愛いご主人の願いは聞き入れなければならない。

「A様。じぃじはA様の見方でございますゆえ、貴方様を叱ることなど烏滸がましいのです。」

その言葉を聞いた小さな小さな主人は、嬉しかったのか決意を固めた表情をしていた。
いつになくすっきりと、何かが解き放たれた様な表情に執事は疑問を抱いたが、すぐに取り払った。

「では、いきましょうか。」

執事は小さな手を引いて玄関へと歩いていく。

決意を宿した手を引いて。

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